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生産計画はなぜ必要か? ズバリお答えしようこうすればうまくいく生産計画(1)(3/3 ページ)

今日の製造業が抱えている根本問題は「大量・見込み生産の体制を残したまま、多品種少量の受注生産に移行しようとしている」ことにある。生産計画を困難にするさまざまな要因を乗り越え、より良い生産計画を実現する方法を検証してみよう。

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受注生産のツールとしての生産スケジューラ

 では、顧客からの先行内示があてにならない(あるいはもらえない)業種ではどうすべきだろうか。そこで、ある総合容器メーカーの例をご紹介しよう。容器製造は典型的な繰り返し受注生産型の工場である。製品バリエーションは非常に多い。容器形状は多種多様だし、同じ形状でも印刷・表面加工や物流荷姿によって品種が変わる。

 この会社では、毎月営業部門が品種別需要予測をまとめる。計画部門は、需要と物流センターにある製品在庫を基に、工場別の生産計画と製造ライン別スケジュールをITツールを基に立案する。製造ラインごとに煩雑な制約条件があるので、コンピュータを援用しているが、あくまで立案するのは計画担当者の頭脳である。ところで、この段階ではまだ、印刷・加工や荷姿の詳細までは予測できていないことが多い。そして例にたがわず、顧客の納期要求は頻繁に変わるため、このスケジュールはほとんど毎日のように更新されていく。

 そこでこの会社では、生産スケジュールのガントチャートを、すべての営業所から見ることができるような仕組みを構築した。そして営業マンが、加工や荷姿などの条件まで確定したオーダーを受注したら、スケジュール上であらかじめ枠取りされた生産量の中の必要本数分に、その条件を入力し確定していく。つまり、ある種の「座席予約方式」である。

 この方式のおかげで、営業と製造のコミュニケーションは格段に見通しが良くなった。また、以前、スタンドアロン型の生産計画ツールを使っていたときに生じていた無駄な納期確認や調整も、不要になっている。

 「ウチは受注生産だから、生産計画やスケジューリングの手法は使えない」と信じている人は案外多い。それは間違いである。「ウチは営業がワガママだから、システム化は無理だ」と思い込んでいる人も多い。それは誤解である。生産計画・スケジューリングは需要(販売側)と供給(工場側)を擦り合わせるためのシステムなのである。

よりベターな生産計画を目指して

 現代の多くの製造業が抱えている根本問題とは何だろうか。それは、非常に圧縮した形で表現するならば、「大量・見込み生産の体制を残したまま、多品種少量の受注生産に移行しようとしている」ということにある。だから調達から販売までのサプライチェーンのあちこちで、プルとプッシュが混在しているのである。

 生産計画とは、最初に述べたように、このような状況下で、需要変動に追随して工場を効率良く運転するための仕組みである。むろん、生産スケジューラは工場を営業の意のままに動かすツールではない。毎日、顧客のいうまま気まぐれに生産計画を変えていたら、生産性向上も原価低減もあったものではない。同時に、生産計画は工場のご都合を通す場所でもない。何が可能で何が不可能か、お互いに共有するための仕組みなのである。

 生産スケジューラの導入を希望する計画担当者に対して、「おまえ1人を楽にさせるために、ITツール導入費の大金は使えない」などと答えた工場長がいた。それは近視眼的な考えだ。良い生産計画は、工場全体の生産性を向上させる可能性を持っている。生産・物流・販売の全体を、統合されたシステム=「生産システム」としてとらえてないから、問題が見えなくなるのだ。

 あなたの会社にも、確実に生産計画とスケジューリングは必要だ。それも、ITツールを活用した形で。だが、中核はIT技術ではない。「生産システム」の中の「計画業務」の確立だ。ITで最適計画の自動スケジューリングが実現するなどと夢見てはいけない。あなたの会社は、運転手抜きで走れるモノレールではない。あらかじめ敷かれた軌道の上を走っていればいいわけではないはずだ。

「カーナビ」は要る。だが、運転手は不要にはならない

 それでは、計画担当者が階段で立ち往生する会社と、生産計画・スケジューリングを生産システムの運転に活用している企業は、どこが違うのだろうか。より良い生産計画実現までに横たわるハードルを、どのように乗り越えていったらいいのか? それを、これから何回かに分けて検証してみよう(次回へ)。



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