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生産計画はなぜ必要か? ズバリお答えしようこうすればうまくいく生産計画(1)(2/3 ページ)

今日の製造業が抱えている根本問題は「大量・見込み生産の体制を残したまま、多品種少量の受注生産に移行しようとしている」ことにある。生産計画を困難にするさまざまな要因を乗り越え、より良い生産計画を実現する方法を検証してみよう。

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「計画はずし」は可能か

 ところで、需要変動のある受注生産であるにもかかわらず、生産スケジューリング担当者のいない工場も実在する。長野にあるその企業を訪れた際、「ウチの会社には、スケジューリングをやって“自分は仕事しています”なんて錯覚している職長は1人もいない」と、胸を張っていわれた。生産スケジューリングは何の付加価値も生み出さない、不要な間接業務だ。だったらそんな仕事はなくしてしまえ。そういう信念で、その工場は運営されていた。どんなやり方か、あなたも想像してみていただきたい。

 この会社の主な製品は、自動車部品だ。トヨタの系列に属する、いわゆる二次下請けメーカーである。従って基本的な受注の仕組みは「かんばん」であり、顧客である一次下請けから毎日送られてくる。この工場では、受け取った職長がかんばんを現場入口近くのカードボックスに指示書として差して立てる。ボックスは1日の就業時間を小割りにした形になっているのだが、職長はかんばんを、わざと時刻をばらして差し立てる。例えば4枚受け取ったら、2時間置きに配分して「平準化」するのである。スケジューリングに頭を使う必要はない。加工組み立て工程はU字ラインによるセル生産やシングル段取り化が徹底しているので、品種を混流して平準化されてもOKである。この工場からさらに下請けの部品サプライヤーへの手配も、同じようにかんばんで行われる。実に見事で効率的だ。

 ところで、この会社がかくも見事にスケジューリングなしで運用できる真の理由は、何かお分かりだろうか。徹底した現場改善? 確かに、それは必要だ。だが、十分条件ではない。

 実は、ご承知かもしれないが、かんばんは分納の指示書であり、発注総量については先行内示に従って準備する。だから、この会社がかんばんで運用できるのは、前月・前々月に受け取る「発注内示」の量が安定していて、あまり予測が狂わないからなのである。これはトヨタ系列の特徴だ。そして、なぜ内示があまりずれないかというと、トヨタ本体の生産計画が、最終需要の予測にきちんと立脚しているからだ(図2)。

図2 自動車業界のサプライチェーンと生産計画の位置付け
図2 自動車業界のサプライチェーンと生産計画の位置付け

 いい換えるならば、トヨタ系列では、最終メーカー兼販売会社であるトヨタ自動車のみが生産計画を立案していて、後の全サプライヤーは、その計画どおりにきっちりと制御されている。そのコントロールの仕組みがかんばんなのである。下請けが独自の計画を立てる必要はないし、勝手な判断で独自に動けばかえって混乱が生じる。時々、生産計画有害論に立って「計画はずし」を指導するコンサルタントがおられるが、それはこうした条件が満たされたときのみ正しいというべきだろう。

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