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生産計画はなぜ必要か? ズバリお答えしようこうすればうまくいく生産計画(1)(1/3 ページ)

今日の製造業が抱えている根本問題は「大量・見込み生産の体制を残したまま、多品種少量の受注生産に移行しようとしている」ことにある。生産計画を困難にするさまざまな要因を乗り越え、より良い生産計画を実現する方法を検証してみよう。

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計画担当者の悩める日常

 また急な納期変更だ。勘弁してほしいよ、と電話を切りながらあなたは思う。でも「何とかしてみます」と営業には答えてしまっている。すぐ“No”とはいえないのが、計画担当のつらい立場だ。階下の製造2課に、調整を依頼しに行かなければならない。しかし、あなたは製造2課長の顔を思い浮かべながら、答えをすでに予測できている。「もう段取りも加工手配も掛けちゃってるぞぉ! いまさら別のモノ刻めってのか? ダメに決まってるだろ。それに包装材料だってもうないはずだ」。あの課長の答えは、常にノーから始まる。



 そこであなたは、まず外堀を埋めるために、先に資材課の部屋に寄ることにする。問題の包装材料の在庫を確認するためだ。確か先月、まとめて発注したはずだ。幸い、すでに納品されていることが分かった。ところがあなたは資材課長から、別の愕然(がくぜん)とする事実を聞く。「包材は来たけどなあ、あれのシャフト部品な、昨日使ってしまったわ」。何で!? 「何でって、例の新製品な、今週量産試作に掛けたん知ってるやろ。でも加工不良が出て作り直しになったんで、シャフト材を転用させてくれいわれてな」。

 なぜ本社の企画設計部は生煮えな新製品を次々投入してくるんだ。工場の負担も考えてほしい――そう思いながら、あなたは大急ぎで購買部に行き、シャフト部品の追加を掛け合う。しかし答えはにべもない。「いまどきの鋼材不足知ってるだろ。今日発注掛けたって、納期は2カ月かかる」。どうしようか。ああ、生産計画なんか要らない国に行きたい……。階段の踊り場で立ち尽くすあなたの、ポケットで携帯が鳴り出す。かけてきた相手が誰か、番号を見なくてもあなたには想像がつく。営業からの催促の電話なのだ。

生産計画の存在しない会社

 生産計画がまったく存在しない会社を、実は筆者は知っている。何年か前、私はその会社の工場造りを手伝い、基幹業務システム構築を担当した。製品はLNG(液化天然ガス)。中東の国カタールに、石油メジャーと国営会社が合弁で設立した企業である。

 液化天然ガスの工場は新設するのに千億円単位の金が掛かるが、生産の運営は単純だ。原料のガス(海底ガス田から噴出する)を精製し、冷やして液化し出荷する。主要製品はLNGの1種類。それは、十年以上の長期販売契約によってアジアや欧州に引き取られる。需要変動はないから、生産量もずっと一定。後は若干の副産物があるのみ。

 こうした工場には、生産計画は要らない。必要なのは設備保全計画だけだ。工場は24時間連続操業だが、何年に一度か、停止して一斉点検を行う。でも、その前後に作りだめをするわけではない。なにせ原料ガスの噴出量は変わらないからだ……。

 この会社と、あなたの会社との違いは何だろうか(図1)。まず、製品の種類が違う。品種数も、断然多いだろう。しかも毎年、新製品がラインアップに登場する。古い製品は次第に消えていく。だから、工場設備も毎年少しずつ変わっていく。原料資材も、外から買ってこなければならない。地面の下を掘れば出てくるわけではない(そうだったら、あなたの悩みの何分の1かはどれほど楽になるだろう!)。

図1 生産計画が不要な工場、必須な工場
図1 生産計画が不要な工場、必須な工場

 しかし、最大の違いは、「需要が一定」というところにある。たとえ多品種であっても、毎月同じ量を同じ比率で作り続けるのみならば、生産計画なんか要らない。工程の段取り替えスケジュールだって、いったん決めれば毎月ずっと不変だ。確かに設備故障や購入品の不良が出たら、多少のスケジュール調整は必要になるかもしれない。しかし、資材にある程度の安全在庫を持てれば、その心配さえほとんどなくなるはずである。

 ということは、生産計画とは「主に外部需要の変動に対応するために必要な業務機能」であることが、お分かりいただけると思う。変化がなければ、計画もマネジメントも要らない。これが、生産管理という仕事の本質なのである。

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