車両火災が!……でも実証された安全性:第6回全日本 学生フォーミュラ大会 レポート(1)(3/3 ページ)
走行車からの奇怪音や発火事故が発生した第6回 学生フォーミュラ大会。走行審査の中継アナウンサーにその舞台裏を直撃!
自動車作りのプロが学生に伝えたいこと
インタビューの中で桜井氏は、大会に参加した学生に対し次のような言葉を残した。
「学生の中には車検が厳し過ぎるという人もいますが、自動車を作る側からすれば実際の現場は100倍も200倍も大変です。フォーミュラ大会の車検審査でのチェック項目はどれも基本的なことで、当たり前のことばかりです。車検を通じて、学生たちが将来の自動車業界を担うエンジニアとして正しい方向へ向けるか、人間育成のためにそれを実地で訓練することがこの大会の目的です。学生たちにどう思われようが、正しい知識を伝えたいということでスタッフの意思は統一しています。また、逆にいえばそういうギャップがあるからこそ私たちが厳しくする意味があるともいえます」(桜井氏)
学生の中には、車検の際にフレーム部分の細かい溶接について厳しく追求されることに対し「こんなに細かいところまで?」という人もいるようだ。
「溶接の技能を上げてもらう必要はありません。しかし、実際に自分で溶接した経験があれば部品を設計するときに溶接しやすい部品形状、強度が保ちやすい部品の形状が分かる。将来図面を描く仕事をした場合に、場所的に溶接しやすい図面、ガスが逃げにくい形状を配慮した図面が描ける。それが訓練であり、大切なことです」(桜井氏)
エンデュランスで速いタイム、安定した走りを追求するあまりに、そうした“走る車づくり”に集中してしまいがちだが、フォーミュラ大会の本来の目的は、車づくりを通して、実際のものづくり工程の一環を学ぶことにある。
「本物は厳しいぞ、ということをひるまず毅然(きぜん)とした態度で、きちんと伝えたいと思います。そして直接いわれた人でなくても、その学校の伝統として後輩に語り継いでほしいと思います」(桜井氏)
学生、企業側、指導者が三位一体となって一生懸命取り組んでいるからこそ、フォーミュラ大会のレベルは年々上がっている。参加校が増加している背景には、こうした技術伝承サイクルがあるからだろう。
次回は各参加校の紹介と表彰式の模様をお伝えする。お楽しみに!
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