車両火災が!……でも実証された安全性:第6回全日本 学生フォーミュラ大会 レポート(1)(2/3 ページ)
走行車からの奇怪音や発火事故が発生した第6回 学生フォーミュラ大会。走行審査の中継アナウンサーにその舞台裏を直撃!
アメリカ大会での失敗再び……発火事故はなぜ起きたのか
大会3日目(13日)の午前中、走行中の車両から3mの炎が発生し、後部にあるエンジンを中心に車全体が炎に包まれた。原因は燃料系のパイプの疲労破壊による燃料噴射。“ボンッ”という音とともに燃料が噴出し、その瞬間に気化、排気熱で燃料に引火したという。
車両火災を起こしてしまった国士舘大学の小田博之チームリーダーは、「燃料パイプを固定する部分が緩んで走行中に外れてしまいました。そしてそのまま動いている状態で燃料噴射したような状況です。車検でボルトの緩みをチェックしていたのですが、やはりチーム人数が少ないということもあり、最終チェックの段階で細かい部分の見逃しが起きてしまったのだと思います。5月に参加したアメリカ大会でも接触不良でエンジンが掛からなくなってしまって、エンデュランスを完走できなかったという苦い思い出があるのですが、また同じ失敗をしてしまいました。次の大会ではもう一度考え直して臨もうと思います」
現場でその模様を見ていた桜井氏は今回の発火事故から、車両の安全性について次のように語る。
「今回のような車両火災が起きてしまった場合に備えて、車両には火の出る可能性がある部分からドライバーを守る『ファイアウォール(防火壁)』の設置が義務付けられています。材料はすべてアルミ板で囲み、範囲はヘルメット上部から上に150mm。それ以降は全部シールドする規定となっています。ファイアウォールから上はヘルメットがあるのでドライバーに直火はきません」(桜井氏)
「加えて、万が一の場合にもドライバーが着ているレーシングスーツはクラッシュ時に引っ張り出しても衣服が破れないような強度設計がされ、緻密(ちみつ)な耐火性を持つ不燃材を材料に作られています」(桜井氏)
「さらに車検では、脱出性というのも性能として含めています。ドライバーがすべての装備を身に付けて、5秒以内に車の外に脱出する。ドライバーは実際に何度も脱出の練習をしています。そのため車体はベルトを外し、ステアリングも外れる構造になっています」
火災が起きた場合にドライバーを守るものとして、ファイアウォール、レーシングスーツ、そして逃げる訓練の3点があり、それぞれに厳しい審査が課せられているようだ。
「出火してから初期消火開始までに10秒たっていませんね」(桜井氏)
スタッフは走りながら消火器の黄色い安全ピンを抜き、ホースのラベルを切って、消火に当たった。厳しい車検、そしてスタッフの厳密な訓練こそが、その大会の安全性を証明している。
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