パーティングラインを極めるべし!:成型部品設計のツボ(3)(2/3 ページ)
キャビティとコアの分割面が「パーティングライン」(PL)。その条件により勾配付けの手順に工夫が必要となる。今回はモデリングのツボが満載だ
穴形状のパーティングライン
成形部品で、外形形状ではなく穴形状によって構成されるパーティングラインを「押し切り」と呼び、以下の3つに分類されます。
- キャビティ面押し切り
- コア面押し切り
- 中間押し切り
図5のように、キャビティ面を合わせ面として構成する形状を「キャビティ面押し切り」と呼び、コア面を合わせ面として構成する形状を「コア面押し切り」と呼びます。
また外装部品の場合、そのパーティングラインをキャビティ面に設定すると、体裁面(パーティングライン上)にバリが発生した場合に指で触った感触が悪くなります。さらにバリが増大すると、成形部品で指を切ってしまうようなケガにつながります。体裁面のバリが出ないようにするためにコア面で押し切り面を設定する必要があります。
「中間押し切り」は、肉厚の間に合わせ面(パーティングライン)を設けて、キャビティ、コア両側に穴形状を作成します(図6)。また、キャビティとコアの寸法のバラツキによる段差(キャビティからコアの形状が見える)を回避するため、あらかじめコア側の穴形状を大きく取ります。
今回のモデリングのツボ!
第1回で説明したように、成形部品のモデリングには抜き勾配を付けることが必要不可欠ですが、パーティングの種類によっては抜き勾配を付けるためのモデリングの手順が異なります。
抜き勾配が一定な面
図7左図のように、抜き勾配が必要な面(A面)では、どこで断面を切っても角度が一定な面を指します。
抜き勾配が一定でない面
図7右図のように、抜き勾配が必要な面(B面)では、断面を切る場所によって角度が異なる面を指します。デザインで稜線が規定されている場合はこれに当たります。
抜き勾配が一定な面を作成する場合には、ドラフトコマンドを使用しますが、抜き勾配が一定でない面を作成する場合、それ以外の方法で形状を作成しなければなりません。
【モデリングのツボ! その1】パーティングラインが平面で、抜き勾配が一定な面を持つ形状
抜き勾配が一定な面は、前述のようにドラフトコマンドを使用して形状を作成していきます。パーティングラインを含む平面を抜き勾配の基準面に指定し、その平面の法線方向に一定角度の抜き勾配が生成されます(図8)。
- 抜き方向:成形部品の抜き方向を指し、抜き方向に対して垂直な平面(通常はパーティングラインと同一)を選択します。抜き方向に等しいエッジを指定する場合もあります。
- 基準面:ドラフトを付ける際に基準となるパーティングラインを指定します。この平面に含まれる線を固定して、側面に抜き勾配が付きます。
- 角度寸法: 任意の寸法を入力します。
また第2回で紹介したとおり、キャビティ側をすべてモデリングした後、シェルコマンドで薄肉の形状を完成させる手順が効率的なため、抜き勾配もシェルの前に完成させるようにします(図9)。
【モデリングのツボ! その2】パーティングラインが平面で、抜き勾配が一定でない面を持つ形状
サーフェスのコマンドの中には、準備したカーブ(エッジ)を境界線にして、その間に境界面を生成するコマンドがあり、図10のようなサーフェス生成面(ハッチング面)を作成します。
モデリング手順は以下になります。
- キャビティ形状を作成
- 形状の上面、底面にスケッチ平面を設けて、境界線にするカーブを作成
- サーフェスコマンドを使用して2つのカーブを通過するサーフェスを作成
- 作成したサーフェスを使用しソリッド形状の不要な部分をカット
- キャビティ形状が完成したところでシェルコマンドを使用しコア側を作成
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