パーティングラインを極めるべし!:成型部品設計のツボ(3)(1/3 ページ)
キャビティとコアの分割面が「パーティングライン」(PL)。その条件により勾配付けの手順に工夫が必要となる。今回はモデリングのツボが満載だ
パーティングラインの定義
射出成形のプロセス(第1回の図1〜5)において、溶融樹脂を金型内に注入し、充填(じゅうてん)された溶融樹脂を冷却・固化させた後に成形部品を取り出します。その際、金型を開かせなければ成形部品を取り出すことができないので、金型の固定側(キャビティ)と可動(コア)側を分割する必要があります。その分割ライン(面)を「パーティングライン(Parting Line=PL)」といいます(図1)。
また成形部品を設計する際には、アンダーカット形状を設ける場合があります。通常のキャビティとコアで形状が作成できない場合、金型にアンダーカットを処理するための部品(スライド・傾斜コア)を追加して形状を作成します。そのスライドの分割ライン(面)もパーティングラインといいます。スライドについては、次回詳しく説明します。
また、製品形状に穴がある場合にも、金型の合わせ面が存在し、その面をパーティングラインと呼びます。
パーティングラインの特徴
パーティングラインは、金型の構造上、鋭利なエッジ(シャープエッジ)となるため、なるべく手の触れにくい位置に設定する必要があります。やむを得ず、手に触れやすい部分にパーティングラインを設けざるを得ない場合には、図2のように、コア側にR形状を作って、シャープエッジを作らないようにすることがあります。
外形のパーティングライン
パーティングラインを複雑にすると、以下のような問題があるため、通常は可能な限り平面または単純な曲面(一方向の断面が直線となる曲面)にします(図3)。
- パーティングラインが、複雑な3次元曲面(2方向の断面がいずれも直線ではない曲面)になると、金型加工に時間がかかり、金型費が上がります。
- 金型のメンテナンスが非常に困難になるため、バリなどの不具合が発生しやすくなります。
金型の開閉時、パーティングラインには常にキャビティとコアが突き当たります。その突き当たる面(押し切り)が適切でないとキャビティとコアが摩耗し、すき間が発生し、溶融樹脂がそのすき間に入り込み駄肉(だにく)となります。この駄肉をバリと呼びます。またバリが出た場合、部品不良となります。バリが発生している状況を放置すると、くさび状に成長してしまうので、発見したらすぐに金型を修正する必要があります。
アンダーカットのパーティングライン
アンダーカット形状の場合、コア側の内部でアンダーカット処理をする必要があります。そのためには、金型内で金型の一部を金型の抜き方向と垂直に移動させる「スライド」という手法を使いますが、スライド方向に抜き勾配(こうばい)を付ける必要があります。
しかし、スライド構造を採用すると、金型構造が複雑になるので、図4のように、スライドなしでアンダーカットとよく似た形状を作成する方法があります。「製品に穴が開いてしまう」という欠点はありますが、それが許容される場合にはこの方法を採用します。
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