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トヨタ!? 日産!? どうなるFlexRay普及への道組み込みイベントレポート(1/3 ページ)

上半期最大の組み込み関連イベント「ESEC」。今回は“カーエレクトロニクス”関連の製品・技術を中心にその模様をお伝えする

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 現在、組み込み分野で最も“熱い”分野の1つといえるのが「カーエレクトロニクス」だろう。今回のESECでも多くの企業がカーエレクトロニクス関連の展示・デモを行っていた。

 まずは、日本での動向が気になるFlexRayやそのほかのカーエレクトロニクス関連の製品・技術について各社の見どころをお伝えしていこう。

日本でFlexRayが普及するのはいつ?

 ご存じのとおり、FlexRayは主にパワートレインなど制御装置での利用が想定されている次世代の車載向け通信プロトコルだ。また、将来的に「X-by-wire(注)」システムを実現する手段としても注目を浴びている。欧州ではBMW社を中心にすでに採用が進んでおり、日本でも主要自動車メーカーや電装品・半導体メーカーなどが参加している車両ソフトウェア標準化団体「JasPar(Japan Automotive Software Platform Architecture)」とそのワーキンググループを中心にFlexRay規格の標準化を進めている。ESECでは、FlexRayの仕様検討や試験を行う際に必要となる評価ボードや各種ハードウェア/ソフトウェアツールの展示・デモが行われていた。

※注:油圧や機械的な機構により駆動していた制御を、車載LANを介した制御情報の伝送により電気的な機構で制御すること。


 NECエレクトロニクスは、同社のFlexRayコントローラ内蔵32ビットマイコン「V850E/PHO3」とFlexRayトランシーバ「μPD72751」を搭載したFlexRay評価ボードによるFlexRay通信のデモを行った。同評価ボードをバギーカーに複数搭載し、駆動用モーター、ヘッドライトなどの制御を実現した。

バギーカーを用いた車載ネットワークのデモ環境
画像1 バギーカーを用いた車載ネットワークのデモ環境

 V850 E/PHO3は、車載ネットワーク規格であるFlexRay Ver.2.1準拠の通信コントローラを内蔵した32ビットマイコンだ。CPU動作周波数はV850E1コアで最高クラスの128MHzで、大容量メモリ(Flash:1Mbytes、RAM:60kbytes)やシャーシ制御に最適な16ビットPWMタイマなどの周辺機能を搭載しているのが特長だ。一方、μPD72751は、FlexRayコンソーシアムが発行するEPLスペック(Electrical Physical Layer Specification)と、JasParからの要求規格にも準拠したトランシーバLSIで、車載用途のノイズ環境を考慮した高耐電磁気特性を実現しているという。ちなみに、V850E/PHO3の量産ならびに、μPD72751のサンプル出荷は2008年3月4日に開始されたばかりだ。

FlexRay評価ボード
画像2 FlexRay評価ボード

 過去の展示会でも同様のデモを行ってきたが、これまでは他社製のトランシーバを採用していたという。「今回のESECでは、自社製のトランシーバを搭載した評価ボードによるデモとなっている。FlexRayをはじめとする車載ネットワークではノイズ耐性が重要となる。今回、自社製コントローラを採用したことでこれまで以上のノイズ耐性の強化が実現できた」と説明員は語った。また、「将来的に車載カメラなどによる画像認識や障害物検知が本格化したら、現在標準的に使われているCAN(最大通信速度:1Mbit/s)では限界がある。そのときこそ、FlexRay(最大通信速度:10Mbit/s)の採用が加速するのでは?」と今後の見通しについて話した。


 自動車や産業機器分野のネットワークプロジェクトで使用される開発ツールを提供しているベクター・ジャパンは、FlexRayシステムの開発工程の各段階で開発者をサポートするツールチェーンの展示と3台のPCを用いたCAN/FlexRay通信ならびに通信障害のデモを行った。

CAN/FlexRay通信ならびに通信障害のデモの様子
画像3 CAN/FlexRay通信ならびに通信障害のデモの様子

 分散リアルタイム制御システムを開発するための汎用ツール「CANoe.FlexRay」により、FlexRayバスのシミュレーション/解析/テストを実現。さらに、同ツールのネットワーク統計WindowやFlexRayクラスタ モニターWindowにより、バス通信の解析や各ノードが行っているバス通信と、FlexRay全体のスケジュールを制御・定義しているFIBEX(Field Bus Exchange)データベースに記述されている通信内容の比較が可能だという。なお、同ツールはFIBEX形式のバージョン1.1.5、1.2、2.0での記述をサポートしているとのこと。

「CANoe.FlexRay」の画面
画像4 「CANoe.FlexRay」の画面

 さらに、FlexRay用ストレス生成モジュール「FRstress」を使用することで、物理的なバス不具合やFlexRayフレームの障害などを発生させることができる。エラーや妨害に対するシステムの振る舞いをチェックする際に有効なツールだという。


 そのほか、横河ディジタルコンピュータやエレクトロビットなどのブースでも同様にFlexRay通信のデモや開発ツールの展示を行っていた。

横河ディジタル(上)、エレクトロビット(下)のFlexRay通信のデモ環境
画像5 横河ディジタル(上)、エレクトロビット(下)のFlexRay通信のデモ環境

 今回、日本でのFlexRayの普及について各社に話を伺ったところ、「普及は2011〜2013年ころで、導入初期の段階ではエンジン、トランスミッション、ステアリング周りなどの自動車の基本機能制御部分では使われないだろう」というのが共通の見解であった。また、X-by-wireシステムの実現となるとさらに先の2015年ころになると予測する企業もあった。現在、標準的に使用されているCANは仕様記述があいまいで詳細な規定がなかったため、各半導体ベンダで仕様のずれがあった。これが原因で、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)間の相互接続に問題が発生したり、複数企業のECUを組み合わせて利用する際にうまく接続できなかったりと大変苦労した経緯がある。こうした過去を繰り返さないためにFlexRayはかなり慎重に仕様策定を進めているようだ。


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