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トヨタ!? 日産!? どうなるFlexRay普及への道組み込みイベントレポート(2/3 ページ)

上半期最大の組み込み関連イベント「ESEC」。今回は“カーエレクトロニクス”関連の製品・技術を中心にその模様をお伝えする

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車載カメラの活用事例

 日立アドバンストデジタルは「車載カメラの新しい使い方」をテーマに、6つの車載カメラ(前・後・中央に左右2つずつ)を搭載した模型自動車を用いた“全周囲俯瞰(ふかん)画像処理・距離測定”のデモを行った。

 6つのカメラの画像を基に全周囲俯瞰画像をモニターに表示。また、模型自動車の前方(バックでの駐車の際は後方)に付いている2つのカメラの画像を基に、駐車スペースにあるPマークの位置を検出して、その離差により距離を算出してPマークの手前で停止させるというもの。さらに、白線認識により白線と平行に駐車させることを実現しているという。


模型自動車を用いた全周囲俯瞰画像処理(右上)・距離測定のデモの様子
画像6 模型自動車を用いた全周囲俯瞰画像処理(右上)・距離測定のデモの様子
関連リンク:
日立アドバンストデジタル

ドライブ・レコーダソリューションのデモ環境
画像7 ドライブ・レコーダソリューションのデモ環境

 日立超LSIシステムズは、ルネサス テクノロジのワンセグ対応カーナビゲーション機器・ポータブルメディアプレーヤ向けアプリケーションプロセッサ「SH-MobileR/SH7722」を用いた「ドライブ・レコーダソリューション」のデモを行った。カメラ画像の取得やSDメモリなどの外部ストレージへの記録をワンチップで実現しているのが特長だ。

 衝突前後の画像記録までの主な流れは以下のとおりだ。

  1. カメラ画像の取得
  2. JPEG圧縮(最大30fps)
  3. 画像のバッファリング(SDRAMへ)
  4. 衝突を検知!
  5. 衝突前後の画像とその際の車速や位置情報を含めたデータをSDメモリなどの外部ストレージへ記録

デバッグ用ポートがなくても解析できる

 組み込みシステムのデバッグといえばJTAGやICEなどが頭に浮かぶが、ここで紹介するのは最終評価段階や製品出荷後に発生する障害を動的に解析するツール「QQFORCE」だ。

 ESEC開催直前の2008年5月12日にリリースされた同製品は、横河ディジタルコンピュータとコードギアとの共同開発によるもので、JTAGやICEなどのデバッグ用ポートがないWindows CE/Windows Mobile機器の不具合解析を可能にするというもの。「収集した解析ログは一度RAMに格納してからファイルに出力するようになっている。これを任意のタイミングでSDメモリや外部ストレージなどに保存する」と説明員。現在、サポートしているターゲットデバイスのOSはWindows CE 5.0/Windows Mobile 5.0だが、今後LinuxやITRONへの対応も検討しているという。

「QQFORCE」を導入したWindows Mobile 5.0機器(左)と開発中のログビューア(右)
画像8 「QQFORCE」を導入したWindows Mobile 5.0機器(左)と開発中のログビューア(右)

 同製品はOS、デバイスドライバ、アプリケーションのソースコードに変更を加える必要がなくインストールするだけで使用できるため、市場投入後の製品であってもシステム解析情報を収集できるのが大きな特長だ。近年、製品の多機能化・高機能化に伴い、ソフトウェアの複雑化が増している。さらには、短納期開発が原因で組み込み機器の不具合が発生するといった事象が最終製品で発生することも少なくない、従来のJTAG、ICEによるデバッグ以外にもこうした解析ツールを活用することも必要かもしれない。

 以下に同製品の機能を示す。

  • 同期オブジェクト待ちAPIデッドロック解析機能
  • CPU占有デッドロック解析機能
  • メモリリーク解析機能
  • デバッグログ出力制御機能

鉄道模型で学ぶ機能安全

 人命や社会全般にかかわるような組み込みシステムでは、不具合や故障に対する安全性が最重要課題となる。皆さんも一度は“機能安全”というキーワードを聞いたことがあるのではないだろうか?

 ヴィッツは、機能安全に対する取り組み内容の紹介として、「Nゲージ鉄道模型システム」のデモを行った。同社は、経済産業省 平成18・19年度戦略的基盤技術高度化支援事業において「機能安全対応自動車制御用プラットフォームの開発」というテーマが採択され、機能安全対応のソフトウェアを研究開発している。

Nゲージ鉄道模型システム
画像9 Nゲージ鉄道模型システム。赤色の車両は、LEDとIrDA受信基板を搭載した近鉄7000系パノラマカー(4両編成)

 線路内に埋め込まれているセンサが、通過した車両の底に付いているLEDを読み取ることで各車両の位置を特定し、その情報を管制システムに通知する。管制システムは線路センサから送られてきた車両位置情報を基に各システムに対して制御情報を送信する。

 管制システム、線路センサ、切り替えポイント(管制システムから送られてくる情報を基に、線路の切り替えを行う)などの各ノードは、LINとIrDA(有線 or 無線)で情報を送受信しており、車両自体にはLEDとIrDA受信基板が搭載されている。また、同デモで使用されているソフトウェアは「TOPPERS/ASPカーネル for FuncSafe」、同社と名古屋大学 情報科学研究科 組込みリアルタイムシステム研究室とで共同開発された自動車制御用リアルタイムOS「TOPPERS/OSEKカーネル」、LIN通信ミドルウェアで構成されている。「機能安全について興味があるが、具体的にどのようなものなのか分からない、どのように取り組んだらよいか分からないという人が多いので、今回、その取り組みを分かりやすい形で紹介したかった」と説明員は話す。

関連リンク:
ヴィッツ

組み込み製品開発に特化したプロジェクト管理ツール

 続いて、製品開発における全体最適化に向けたプロジェクト管理ツールを紹介しよう。

 電気・電子製品開発/設計/製造の自動化やソリューション提供、LSIの受託開発などを手掛ける図研と、システム企画・開発やソフトウェアエンジニアリング関連のコンサルティングなどを行う豆蔵は、ESEC開催の前日(2008年5月13日)に発表した組み込みシステム製品向けプロジェクト管理ツール「Project Conductor for Embedded Software」の展示を行った。

 現在の組み込みソフトウェア開発向けのプロジェクト管理ツールは、「個別の機能にフォーカスしている」「組織間をまたぐ計画・進ちょく管理ができない」「プログラムレベルやソフトウェアの詳細な計画までのサポートができない」「組織を階層化して管理できない」などの課題があり、プロセス改善の道具として限界が見られるという。こうした問題を背景に、両社が培ってきたノウハウを持ち寄り、開発に着手したのが同製品だ。

「Project Conductor for Embedded Software」のデモ画面
画像10 「Project Conductor for Embedded Software」のデモ画面

 同製品は、メカ/エレキ/ソフトウェアの開発をそれぞれ個別に管理せずに、1つの“モノ”を作るための一貫した管理体系を有し、組み込み製品開発行程の全体を包含しながら、階層・組織に応じて必要な情報をプロジェクトメンバに提供するものだという。主な機能は、プロジェクト作成、進ちょく管理支援、開発者業務支援、PMO(Project Management Office)支援機能などだ。正式リリースは2008年夏を予定しているという。

関連リンク:
図研
豆蔵
プレスリリース(図研)

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