東北大とアイシンがSTT-MRAM搭載AIチップを開発、16nmプロセスでは世界初:人工知能ニュース
東北大学とアイシンは、不揮発性メモリであるSTT-MRAMを搭載するAIチップを開発したと発表した。「近メモリコンピューティング(NMC」型のAIチップであり、従来比で電源投入からOS起動までの時間を約39倍高速化するとともに、物体検出などのAI処理時間を約10分の1に短縮し、AI処理のエネルギー消費量も50分の1に抑えたという。
東北大学とアイシンは2026年11月2日、不揮発性メモリであるSTT-MRAMを搭載するAI(人工知能)チップを開発したと発表した。外付けのDRAMやSSDなどを必要としない、「近メモリコンピューティング(NMC)」型のAIチップであり、従来比で電源投入からOS起動までの時間を約39倍高速化するとともに、物体検出などのAI処理時間を約10分の1に短縮し、AI処理のエネルギー消費量も50分の1に抑えたという。
今回の開発成果は、東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES) 教授の遠藤哲郎氏のチームとアイシンのチームによるものだ。開発したAIチップは、TSMCの16nm FinFETプロセスを用いて製造しており、容量32MBのSTT-MRAMの他、AIアクセラレータと、CPUとしてArmの「Cortex-A53」を2コア、GPUとしてArmの「Mali-G31」などを集積している。「STT-MRAMを搭載した16nm AI SoC(System on Chip)は世界初」(ニュースリリースより)だという。
今回のAIチップは、プロセッサやAIアクセラレータの近くに配置したオンチップのSTT-MRAMを用いて、データを必要な場所で処理する近メモリコンピューティングにより外部メモリとのデータ転送そのものを削減することを目指して開発された。
AIチップのSTT-MRAMは、AIモデルの重みメモリおよびOSのブートメモリとして利用している。これにより、OS起動の高速化と、AI処理の高速化/効率化が期待できる。
まず、OS起動については、従来方式では電源投入後にDRAMを初期化し、SSDからブートローダーのU-BootやAIモデルのデータをDRAMへ転送する必要があった。これに対して、今回のAIチップは、OSのブートに必要なデータとAIモデルの重みをSTT-MRAMに保持することで、DRAMの初期化や外部メモリ(DRAMやSSD)からのデータ転送を削減できる。その結果、電源投入からOSカーネル起動までの時間が、従来方式の2535.3ms(約2.5秒)に対し、AIチップは65.7msまで短縮できた。これは38.59倍の高速化に相当するという。
一方、AI処理の高速化/効率化では、画像認識で広く利用されているAIモデルのTiny YOLOv3をAIアクセラレータに実装した。ただし、限られたSTT-MRAMの容量を有効活用するため、8ビットと16ビットを組み合わせたハイブリッド乗算アーキテクチャを開発した。16×16、16×8、8×8ビットの乗算を組み合わせることで、16ビットの精度を維持しながら、AIモデルの重みデータ量を17.7MBから、53%減の9.36MBに削減した。一方、物体検出精度を示す mAPは0.325から0.316への低下にとどまったという。また、4×4のタイル内で同じカーネルの重みを複数のクロックサイクルで再利用する重み共有技術を導入し、データ移動量とローカル帯域幅を削減した。
これらの技術により、従来方式ではAI処理前にSSDからDRAMへ12MBの重みデータを転送する必要があったのに対し、今回のAIチップでは STT-MRAMから必要な重みを直接読み出して処理できるようになった。チップ単体のAI処理時間は従来の594.6msから約10分の1の58.5msに短縮された。また、システムレベルの実証では約25倍の高速化を確認するとともに、Tiny YOLOv3の推論エネルギーとして従来比で約50分の1となる1フレーム当たり50.7mJを達成したとしている。
なお、今回の研究成果は、2026年11月1〜4日に台湾新竹市で開催される半導体集積回路技術の国際学会「IEEE Asian Solid-State Circuits Conference(A-SSCC)2026」で発表される予定だ。
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