パナソニック エナジーが高出力電池と蓄電システムで推進するAIインフラ戦略とは:パナソニック エナジーの次世代AIインフラ戦略(3/3 ページ)
「BATTERY JAPAN【秋】〜第21回[国際]二次電池展〜」の基調講演にパナソニック エナジー CTOの渡邊庄一郎氏が登壇。同氏は、気候変動対応や需要が高まるAIデータセンター動向などのエネルギー環境の変化を背景に、同社が電池セルの進化や電源システム、脱炭素の領域などでどのような取り組みを進めているのかについて説明した。
AI時代における電池の役割と未来
パナソニック エナジーはAI時代における今後の電池の役割について、AIデータセンターをはじめとする「Cloud領域」をベースに、EV向けなどの「長持ち/安心」を軸にした電池と、ロボティクス向けなどの「止めない」を軸にした電池が必要になると予測している。
例えば、ヒューマノイドにおいては、電池を設置できる場所がかなり限定されてしまい、軽量で安全性と高出力を兼ね備えた電池が必要となる。この部分に対して、渡邊氏は「われわれの円筒形電池セルとヒューマノイドの親和性は高いと認識しており、ビジネスとして決まってはいないが、電池を活用できるソリューション領域としてしっかりと見定めて取り組んでいきたい」と語る。
このような技術展望を含めて、パナソニック エナジーは不可逆的に進行する新たなアプリケーションシフトに対して、利便性と環境を両立させるために電池/電源システムが重要な役割を占めると認識している。
また、データセンター向けの電力をどのように確保するのかも重要な問題となっている。北米の電源構成の変化を見ると、2010年では石炭が多くの割合を占めていたのに対し、2024年ではこの割合が減っており、天然ガスや再生可能エネルギーの割合が増えてきている。
渡邊氏は「データセンターを運営しているメイン企業はGAFAM(Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon.com、Microsoft)であり、彼らは地球の炭素負荷を増やしたいという考えを持っていない。そのため、AIの需要がこれからも伸びていくことを考えた際に、再生可能エネルギーの割合を増やさなければならない。これを実現するため、ESSのような蓄電システムが増えていくことが予測される」と分析する。
また、北米の発電コストを比較してみても、石炭発電よりも太陽光発電が安くなるというデータも出ている。このことから、パナソニック エナジーは経済的観点を踏まえて再生可能エネルギーが蓄電池の活躍と共に増えていく社会の構築を目指す方針だ。
渡邊氏は「日本や米国では停滞しているが、バッテリーEVは脱炭素のソリューションとして最も洗練されていて、ソリューションとして与える経済的効果が高い技術だと確信している。また、不可逆的に進行する新たな電力問題に対しても、高出力電池と電源システムで電力の負荷変動緩和に貢献し、再生可能エネルギーとESSで未来の問題を解決したいと思っている」と展望を述べた。
全固体電池の現在地についても説明
講演の最後では、現在パナソニック エナジーが開発を進めている全固体電池に関するアップデート情報に関して説明した。現在は150℃の高温環境で使用可能な産業用小型セルの開発を進めている。コイン型と角型の2種類の開発を進めており、2026年度の第3四半期からサンプル出荷を予定している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
パナソニック エナジーCEOが語る「好調なAIデータセンター向け事業」の強さと展望
パナソニック エナジー 社長執行役員 CEOの只信一生氏が報道陣の合同取材に応じ、2026年6月に開催した「Panasonic Group Investor Day 2026」で発表した、AIデータセンター向けの事業における取り組みの詳細や考えについて説明した。
AIインフラ需要が想定超え パナソニックHDの第1四半期営業利益が過去最高達成
パナソニックHDは、2027年3月期第1四半期の連結業績を発表した。AIインフラ関連需要、データセンター関連需要が好調を持続し、第1四半期としては営業利益、調整後営業利益で過去最高の実績となった。
パナソニック エナジーが次世代の蓄電池産業を担う学生の奨学金の第3期募集を開始
パナソニック エナジーは、次世代の蓄電池産業を担う学生を支援する「MIRAI奨学金」の第3期募集を開始した。年間50万円を最長2年間給付するほか、技術者との交流やアルムナイ活動を通じてキャリア形成を支援する。
パナソニック エナジーがハイニッケル正極材を実現した策と次のターゲットとは?
電気自動車(EV)へのシフトの加速と減速により激動の車載電池市場。その最前線で車載用リチウムイオン電池を展開するのがパナソニック エナジーだ。同社に、リチウムイオン電池の材料開発で苦労した点やその解決策、開発に注力しているEV向け高機能電池材料、開発におけるデジタル技術の活用、今後の展開について聞いた。
多様性を重視するパナソニック エナジーの「MIRAI奨学金」、1期生の進路は?
パナソニック エナジーは、電池産業の発展に貢献する人材の育成を目的とする「MIRAI奨学金」1期生の成果報告会を開催した。今後同奨学金では、「MIRAIエバンジェリスト」として、MIRAI奨学金の修了生や現役奨学生との間で緩やかなつながりを継続するアルムナイ活動を立ち上げる方針である。
パナソニック エナジーはアノードフリーで1kWh/Lを実現、全固体電池も市場投入へ
「BATTERY JAPAN 秋 第19回 国際二次電池展」の基調講演にパナソニック エナジー CTOの渡邊庄一郎氏が登壇。同氏は、コロナ禍以降に車載リチウムイオン電池で攻勢を強める中国勢に対して、パナソニック エナジーが技術開発や生産体制の整備、人材育成、脱炭素対応などでどのような取り組みを進めて対抗しているかについて説明した。


