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イタリア海軍“フルスペック”哨戒艦に潜入! 最新鋭の操舵室に迫るイマドキのフナデジ!(19)(2/3 ページ)

「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第19回は、イタリア海軍の最新鋭PPA(多目的外洋哨戒艦)であり、対空戦、対水上戦、対潜戦の全てに対応可能なフルスペック仕様の「ジョヴァンニ・デッレ・バンデ・ネーレ」の操舵室を取り上げる。

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「Naval Cockpit」を導入した新世代の操舵室

 ジョヴァンニ・デッレ・バンデ・ネーレの操舵室で最も特徴的といえるのが、操舵室最前方にある並列複座の「Naval Cockpit」だろう。その開発はLeonardoとFincantieri NexTechが共同で行っている。案内してくれたイタリア海軍士官によると、PPAの艦橋は広い視界を確保するレイアウトを重視し、Naval Cockpitでは左席の「Pilot」と右席の「Copilot」が航海と艦の運用を統合して担当する。機関、舵、各種プラットフォーム、艦管理システムに加え、戦闘システムも操作できるとしている。建造を担当したFincantieriも、従来の艦橋当直士官と戦闘指揮官(海上自衛隊でいうところの砲雷長相当)の役割を取り込んだ統合当直席と説明する。

 ただし、Naval Cockpitだけに操舵室で必要とされる設備を全て収容しているわけではない。その後方には艦長用コンソール、さらにその後方には舵輪と大型ディスプレイ、レバー、ハードウェアスイッチを備えた操艦用大型コンソールが確認できる。さらに、通信機材を集約した通信席、紙海図を広げられる海図台と航海用舶用機器といった“伝統的”な航海関連エリアも用意している。

 このようにPPAでは、Naval Cockpitに操艦やプラットフォーム管理、戦闘システムの機能を大きく集約する一方、操舵室にはそれ以外のコンソールやこれまで継承されてきた航海作業用エリアも残している。PPAの操舵室を理解するには、操舵室の最先端というか最前列にある未来的指向なサイドバイサイドレイアウトのコックピットだけでなく、周囲の設備を含めてその機能を評価する必要がある。

操舵室を右舷後方端から左舷前方へ向けて望んだ全景
操舵室を右舷後方端から左舷前方へ向けて望んだ全景。最前部にNaval Cockpitがある。その後方にも複数のコンソールや作業席が確認できる。このように、PPAの操舵室は、未来的指向の最前列だけで完結する構成ではなく、指揮、通信、航海作業などの従来型設備も同じ空間に組み合わせている[クリックで拡大]
操舵室中央付近に置かれた艦長用コンソール群
操舵室中央付近に置かれた艦長用コンソール群。複数のディスプレイ、キーボード、通話機などを備え、Naval Cockpitとは独立した専用のコンソール群を設けている。最前方コンソール群とは別に、艦長が各種情報を確認しながら指揮を執るためエリアを用意しているといえるだろう[クリックで拡大]
操舵室の後方に配置した操艦コンソール群
操舵室の後方に配置した操艦コンソール群。中央に舵輪、その左右に大型ディスプレイやキーボード、多数のハードウェアスイッチ、レバー類を備える。最前方のNaval Cockpitとは対照的に、従来の船舶用コンソールに近い操作環境も用意している[クリックで拡大]

航空機のコックピットから着想を得た「Naval Cockpit」

 Naval CockpitではPilotとCopilotの2人で艦の航行と海空戦闘を統合して管轄する。イタリア海軍が2021年に公表した資料によると、機関、舵、各種プラットフォーム/システムなどの操艦をつかさどる機能に加え、戦闘システムにも接続して艦載兵器の使用まで可能としている。

操舵室最前方に並ぶNaval Cockpit
操舵室最前方に並ぶNaval Cockpit。イタリア海軍はPilotとCopilotがここから航海、操艦、プラットフォーム管理などを統合して扱えるとしている。座席を中心に大型ディスプレイと操作デバイスを集約する考え方は航空機のコックピットから着想を得たもので、PPAを特徴付ける艤装(ぎそう)の一つといえるだろう[クリックで拡大]

 イタリア海軍は、Naval Cockpitについて「航空機やヘリコプターのコックピットから着想を得たシステムであり、『F-35』に代表される考え方と同様に、多数の情報を1つの操作環境へ集め、整理して提示することで操作者の判断を速めることを狙ったもの」と説明している。多種多様な装置の表示を1つずつ人間が移動して確認するのではなく、操作者を中心に必要な情報と操作手段をまとめることがこのコンセプトの出発点となっている。

 実際にジョヴァンニ・デッレ・バンデ・ネーレのNaval Cockpitを見ると、PilotとCopilotの各席は大型のシートを中心に構成し、その正面には大型ディスプレイが並ぶ。操作席の前には、航空機の操縦かん、もしくはF1レースカーのステアリングホイールを思わせる左右一対の操作環を備える他、それぞれの座席の外側肘掛け前部にもジョイスティックを設置している。それぞれの操作環には「EXT」「INT」「ZOOM」「VIEW」の他、「HDG」「RUD」など複数のボタンやロータリー式操作器を用意しているのが確認できた。単純に舵角を入力するだけの操作環ではなく、着座した状態で複数の操作を行うことを前提としたインタフェースであることが外観からもうかがえる。

Naval Cockpitの左舷側にあるPilot席
Naval Cockpitの左舷側にあるPilot席。画像上側が艦首方向でシートは左舷側に90度回転している。大型座席、前方ディスプレイ群、中央のグリップ型操作環、側方の表示/操作パネルまでをこのシートから把握できる。シートの左肘掛けに相当する部分にはジョイスティックも備えている[クリックで拡大]
Naval Cockpitの右舷側にあるCopilot席
Naval Cockpitの右舷側にあるCopilot席。こちらも画像上側が艦首方向でシートは右舷側に90度回転している。着座位置の正面に複数の大型ディスプレイを並べ、その下に航空機の操縦かんを思わせる操作環を配置する。側方にも表示/操作パネルがあり、右肘掛け相当箇所にPilot席と同様のジョイスティックを備えている[クリックで拡大]
Naval Cockpitに備わる両手把持型の操作環
Naval Cockpitに備わる両手把持型の操作環。グリップ周辺には「EXT」「INT」「ZOOM」「VIEW」「HDG」「RUD」など複数の表記が確認できる。従来型の舵輪とは大きく異なる形状で、操艦入力だけでなく、着座したまま複数の機能を選択、操作することを前提とした構成になっている[クリックで拡大]

 両シートの間にも操作装置を配置しており、複数のレバーやタッチ式表示器に加え、「BOW-THRUSTER」やスタビライザーを示すイタリア語表記を確認できる。Naval Cockpitで艦の挙動を制御する機能まで扱うことは、こうした構成からも確認できる。

Naval Cockpitの両シート間に設けた中央コンソール部
Naval Cockpitの両シート間に設けた中央コンソール部。複数のレバーや小型表示器、ハードウェアスイッチが左右の操作席から手を伸ばせる位置に配置している[クリックで拡大]
Naval Cockpit中央コンソール部の詳細
Naval Cockpit中央コンソール部の詳細。「BOW-THRUSTER」操作器や、スタビライザーに関係するイタリア語表記などが確認できる。Naval Cockpitから舵や機関、各種プラットフォーム/システムを扱えるとしていることを、実際の操作器配置からもうかがえる[クリックで拡大]

 ここで注意したいのは、操船操作と戦闘管制を別々のコンソールに分けるのではなく、1つのコックピットエリアに取り込もうとしている点だ。FincantieriはPPAについて「Naval Cockpitではセンサー、兵器、通信技術を統合するとともに、そこに位置するPilotとCopilotがデジタルコンソールを使って航海、プラットフォーム、戦闘管制を扱う」と説明する。イタリア海軍も、PilotとCopilotが従来の艦橋当直士官と戦闘指揮官の機能を取り込むとしており、PPAでは「操艦する場所」と「武器管制をする場所」の境界そのものを従来より縮めているといえる。

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