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在庫は必要、でも増やしたくない――不確実な時代の「在庫の持ち方」DX Compass:標準化のわなと現場の知恵(4)(2/2 ページ)

実際の現場でのエピソードに基づき「DX推進の指針(DX Compass)」となるような視点を解説する本連載。第4回となる今回は、VUCA時代の在庫の理想と現実について考えます。

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ケース2:設計をも巻き込んだ「製品」から「仕掛」への在庫シフト

 2つ目は、生産方式を変えるために、開発設計部門を巻き込んだ取り組みを紹介します。

 その企業では、従来は原材料の状態で在庫を持ち、内示(予測)に基づいた生産計画に沿って「1週間」かけて製品を組み立てていました。しかし、実際の顧客からの納期確定は「およそ2日前」と生産リードタイムに対して極めて短く、そのため日程変更が頻繁に発生していました。また、納期遅延を防ぐために、どうしても「完成品」の状態で在庫を抱えざるを得ない状況に陥っていたのです。

 そこで、「生産リードタイムを1週間から2日に短縮し、完全な受注生産(手元に確定注文が来てから作り始める方式)に変える」という変革に挑戦しました。その実現の鍵となったのは、原材料として持っていた在庫の一部を、後工程の仕掛在庫として持つ方式に変更することです。原材料からではなく、途中の仕掛在庫から生産を始めれば、以降の工程の改善効果と相まって、生産リードタイムを2日に短縮できる見通しが立ちました。

 ポイントは、「仕掛在庫の金額を抑えつつ、いかに多様な注文に即応できるようにするか」でした。仕掛品が特定の製品にしか使えないようでは、製品別に仕掛在庫が必要になり在庫の山になってしまうからです。そのためには、製品設計も見直して、標準化や共通化を進め、また仕掛在庫を複数の製品に向けて加工しやすくする工夫を進めました。さらには複数の製品向けに素早く加工ができるよう工程作業の工夫も行いました。

 生産リードタイムが2日に短縮されたことで、これまで「完成品」として持っていた高額な在庫を、汎用性が高く比較的安価な「仕掛在庫」へとシフトさせることができ、大きく在庫金額が削減されています。また、仕掛在庫も製品別に持つ必要がないため、在庫を余分に持つ必要がなくなり仕掛在庫の金額も抑えられています。在庫リスクを最小限に抑えながら顧客の短納期要求に応える体制づくりを行いました。

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生産リードタイムの短縮と在庫シフトのイメージ[クリックで拡大] 出所:筆者が作成

製品の開発設計段階から在庫低減は始まっている

 筆者が運営するユーザー会(mcframe Users Group:MCUG)などでも「在庫は必要悪だが、どれくらい持てばよいのか」、また「どのように在庫を持つのがよいのか」という議論が何度も行われています。さまざまな意見が出ますが、最終的には在庫をいかにキャッシュフローにつなげられるかが鍵になります。

 今回取り上げた2つのケースからも、次の3つの対応にまとめられます。

  1. 標準化と共通化:1つの在庫を利用できる製品が多くなればなるほど、在庫利用の可能性が高まり在庫リスクが小さくなります
  2. 転用可能性向上:1つの部材がそのままでは使えなくても、多少の加工によって利用できる製品を増やすことができれば、在庫リスクは小さくなります。また、転用コストをいかに小さくできるかも、転用可能性を高めるためのポイントです
  3. 販売可能性向上:万が一どうしても在庫が残ってしまっても、市場で販売(転売)できるものであれば、在庫のリスクは小さくなります

 在庫をいかにキャッシュフローにつなげられるかという観点では、標準化と共通化ならびに転用は売り上げを通じて在庫を現金化します。また、販売(転売)は在庫を直接現金化します。

 1つ目のケースでは後付けで滞留在庫の転用を検討していましたが、今ならAIの活用も視野に入るでしょう。また、後付けで検討を開始するよりも、複数の製品に転用ができるように事前に検討して組み込んでおく方が効果的です。事後よりも事前の方が、取り得る選択肢も大きく広がります。

 一般に、設計段階で製品コストの8割が決まるとされ、原価企画における設計の重要性が強調されますが、在庫リスクにまつわるコストも設計段階での検討が肝要です。

筆者プロフィール

伊与田克宏(いよだ かつひろ)

ビジネスエンジニアリング
プロダクト事業本部 カスタマーDX推進部 部長

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 生産/販売/原価管理システム「mcframe」のユーザー会(mcframe Users Group: MCUG)の運営を事務局担当として20年間にわたり支えるとともに、現在は200社を超える製造業会員各社の課題解決とDX推進に尽力している。また、モノづくりとITのコンソーシアムやコミュニティーなどにも複数参画し、特にPLMやSCMに関する分科会では、積み重ねた知見を提供するとともに見識を広げ、設計製造連携や原価管理のセミナー講師も担当している。

 ビジネスエンジニアリングでは、製造業の顧客向けに業務改革構想ならびにシステム化企画、ERPシステム導入のプロジェクトを数多く手掛け、その後「mcframe」の商品企画・開発ならびに導入にも従事している。

 著書に「儲かるモノづくりのためのPLMと原価企画」(東洋経済新報社)。イベント講演「mcframeとユーザー会(MCUG)を通じてわかった『SCMシステム導入の真の価値と効果的な活用』」のモデレーターも務めた。


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