溶液から結晶を取り出す晶析の考え方:はじめての化学工学(22)(2/2 ページ)
今回は、晶析の原理になる溶解度と過飽和の考え方、結晶ができる仕組み、晶析方式の分類について解説します。
核発生と結晶成長
過飽和溶液の中で結晶ができる過程は2段階に分けられます。(1)結晶の種になる微小な粒が生まれる「核発生」と、(2)生まれた核が大きく育つ「結晶成長」です。
発生には2種類あります。結晶がまだ存在しない溶液の中から核が生まれるのが「一次核発生」です。その速度は過飽和度に非常に敏感で、ある水準を超えると急激に増加します。対して、すでにある結晶に誘発されて核が生まれるのが「二次核発生」です。
撹拌翼や槽壁との衝突ではがれ落ちる微結晶に由来するものが代表的です。一次核発生より低い過飽和度で起こるため、工業的な製造においては二次核発生が支配的です。結晶成長は、結晶表面の溶質が結晶格子に組み込まれる過程です。成長速度は核発生ほど過飽和度に対して敏感ではありません。
この感度の違いが製品の粒径を決めます。過飽和度が低ければ結晶成長が主体になり、少数の結晶が大きく育ちます。反対に過飽和度が高すぎると核発生が優勢になり、微結晶だらけになります。結晶サイズに規格がある場合も多いため、微結晶は不良となる可能性もあります。
過飽和にしなければ結晶は出ず、過溶解度曲線を超えると微細な結晶が大量に発生します。従って、工業晶析の狙いは、過飽和度を準安定域の中に保ち続けることです。ただし、準安定域では新しい核が発生しにくいため、そのままでは結晶化が始まりません。そこで、あらかじめ用意した小さな結晶である種晶(たねしょう)を加えます。準安定域の中で低い過飽和度を保ったまま種晶だけを育てることで粒径のそろった結晶を得られます。
過飽和のつくり方で分かれる晶析方式
過飽和をつくる方法には、大きく分けて冷却、蒸発、反応、貧溶媒(ひんようばい)の添加があります。どれを選ぶかは、溶解度の温度依存と熱に対する安定性でおおよそ決まります。
冷却晶析は、温度で溶解度が大きく変わる系に向いた方式です。図1の冷却経路のように温度を下げて過飽和をつくります。ただし伝熱面の近くは冷たく局所的に過飽和度が高くなるため、結晶が付着するスケーリングへの対策が重要です。
蒸発晶析は、食塩のように溶解度が温度でほとんど変わらない系で使われます。溶媒を蒸発させて濃度の側から過飽和をつくる方式で、工業的に最も広く用いられています。
反応晶析は、溶液内の反応により溶解度の小さい物質を生成させて析出させる方式です。反応と同時に過飽和が生じるため過飽和度が急上昇しやすく、反応と混合の速さがそのまま結晶品質を左右します。
貧溶媒晶析は、溶質をほとんど溶かさない溶媒を加えて溶解度そのものを下げる方式です。加熱も冷却も最小限で済むため、熱に弱い医薬品の原薬でも使われています。
終わりに
今回は、溶解度曲線と過飽和/準安定域、核発生と結晶成長、晶析方式の分類について解説しました。過飽和にしなければ結晶は出ず、過飽和にしすぎると微結晶だらけになります。準安定域という狭い範囲に過飽和度を保つことが、純度と粒径を両立させる晶析の要件です。次回は、溶解度データを基にした晶析の設計計算について解説します。
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