前工程を知らずに後工程は理解できない〜半導体製造全体の流れをつかもう〜:いまさら聞けない 半導体後工程(1)(2/3 ページ)
半導体の高性能化において重要性が増す後工程を中心に解説する本連載。第1回は、半導体製造全体の流れを概観し、後工程を理解するために必要な前工程の基礎知識を整理する。
前工程とは何を行う工程なのか
前工程の目的は、ウエハー表面へ微細な電子回路を作り込むことです。
現在の最先端半導体では数nmという極めて微細な加工技術が使われています。人間の髪の毛がおよそ70〜80μmであることを考えると、その細かさは数万分の一という驚異的な世界です。
もちろん、こうした加工は一度に完成するわけではありません。
薄膜を形成し、不要部分を削り、不純物を加え、洗浄し、検査する――。こうした工程を何百回も繰り返すことで、複雑な半導体回路が少しずつ作られていきます。そのため前工程は、半導体製造の中でも最も設備投資額が大きく、高度な製造技術が集約された工程といわれています。
前工程を構成する代表的な技術
前工程には多くの工程がありますが、代表的なものとして以下の技術が挙げられます。 まず、ウエハー表面に絶縁膜や金属膜を形成する成膜工程です。続いて、光を利用して回路パターンを転写するフォトリソグラフィ工程があります。半導体製造を象徴する工程であり、最先端の露光装置が使用されます。
その後、不要部分を除去するエッチング工程、電気的特性を作るために不純物を注入するイオン注入工程、表面を平たん化するCMP(化学機械研磨)工程などが続きます。さらに、それぞれの工程の間には洗浄や検査が何度も繰り返されます。
1つ1つの工程は独立しているように見えますが、実際には密接に関係しています。例えば成膜条件がわずかに変化すると、その後の露光精度やエッチング精度にも影響が及びます。
そのため、前工程では工程全体を通じた品質管理が非常に重要になります。
前工程を支える「見えない環境」
ここまで紹介したように、前工程ではnm単位の超微細加工が繰り返されます。そのため、加工技術だけではなく、製造環境そのものも極めて厳密に管理されています。
その代表がクリーンルームです。
半導体工場では、空気中に漂う目に見えない微粒子(パーティクル)が歩留まりを大きく左右します。
例えば数nmの回路を形成する際、わずか数μmのちりがウエハー表面に付着するだけで、回路が正常に形成されず、不良品となる可能性があります。
そのため、クリーンルームでは高性能フィルター(HEPAフィルターやULPAフィルター)によって空気中の微粒子を除去し、常に清浄な空気を循環させています。作業者が着用する防塵服も、衣服や髪の毛、皮膚から発生する微粒子が製品へ付着することを防ぐためのものです。
さらに、温度や湿度も厳密に管理されています。
露光装置や精密加工装置は、わずかな温度変化でも装置やウエハーが膨張/収縮し、加工精度へ影響を及ぼします。そのため、多くの半導体工場では温度をほぼ一定に保ち、湿度も適切な範囲に維持しています。
また、静電気対策も欠かせません。
人が歩くだけでも静電気は発生しますが、半導体素子は極めて繊細であるため、小さな静電気放電(ESD)でも破壊される恐れがあります。そのため、床材や作業台、搬送装置には導電性材料が使用され、作業者もリストストラップや導電靴などを装着して静電気を逃がしています。
このように前工程では、「加工技術」だけでなく、「製造環境」を維持する技術も品質を支える重要な要素となっているのです。
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