BYDの軽EV「ラッコ」は世界初の軽SDV、新開発の「X-PACK」に電動システムを統合:電動化(2/2 ページ)
BYD Auto Japanが日本市場向けに独自に開発した軽自動車タイプのEV「BYD RACCO(ビーワイディー ラッコ)」を発表。満充電からの走行距離が210kmの「200」と同320kmの「300Plus」「300Premium」の3グレードを用意しており、200は補助金込みで200万円を切る199万5000円で購入できる。
「誰にとってもいちばんいい」がテーマ
RACCOは、2025年の軽乗用車年間販売台数130万台の半数に当たる65万台を占める、スーパートールをターゲットに、電動スライドドアの装備とEVであることを独自のポジショニングとしている。BYD Auto Japan 商品企画部 部長の田川博英氏は「スーパートール、スライドドア、バッテリーEVというこれからの時代のスタンダードにおいて、誰にとってもいちばんいいをテーマに、ファミリー層に限定せず、幅広いライフシーンにマッチする軽EVの開発を目指したのがRACCOだ」と説明する。
特に室内空間は室内長2193×室内幅1351×室内高1404mmで、競合他社のエンジン車のスーパートールと同等以上を確保している。
また、バッテリー容量を2種類用意したのにも狙いがある。22.4kWhのバッテリーを搭載する走行距離210kmの200は日々の買い物や送迎に適している。一方、35.8kWhのバッテリーを搭載する走行距離320kmの300Plusと300Premiumは普段使い+休日の遠出を想定している。エンジン車であれば、200は非ターボ車、300Plusと300Premiumはターボ車を想定顧客としている。
統合型EV技術「X-PACK」を新たに設計
日本市場向けにゼロから開発したRACCOは、2024年の開発決定から約2年という短期間で完了した。BYDの中国本社で海洋シリーズ商品ディレクター RACCOプロジェクト開発責任者を務める楊歩益氏は「BYDにおける20年以上のバッテリーやEVの技術開発の積み重ねがあったからこそ、全長3400mm以下という軽自動車規格において、安全性、走行距離、室内空間の全てを満たしたEVを開発することができたと考えている」と強調する。
RACCOの開発に向けては、軽自動車規格のサイズにバッテリーや電動システムを収めることを目的に統合型EV技術「X-PACK」を新たに設計した。X-PACKは、BYDが得意とするリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを車体構造の一部として組み込むCTB(Cell to Body)をベースに、配電ユニット、モーターコントローラー、コンプレッサーコントローラー、PTC(正温度係数)ヒーターコントローラー、電源ユニットを一体化したユニットである。
X-PACKによって車両前部のエンジンルーム内のレイアウトを最適化することで、82mmの広さの前方クラッシャブルゾーンを確保することができた。これは、X-PACKを用いない場合と比べて39%の増加となっている。また、エンジンルーム内の上側にも余裕ができるため歩行者保護スペースを40%拡大し、衝突時に歩行者の頭部に加わる力を35%削減できている。バッテリーを床下に配置するためEVは室内高の確保が難しいが、エンジン車と同等以上の室内高1404mmを実現するのにもX-PACKが一役買っている。
バッテリー、シャシー、ボディーを一体化することによってねじり剛性が34%向上したことで重心が77mm低くなり、安定したハンドリングと優れた操縦性を実現している。X-PACK内で熱マネジメントを含めた車載システムを統合制御することでシステム効率は90%以上となっている。
衝突安全性能を確保するために、車体の鋼材の71%に高張力鋼を採用して車体剛性を強化した。2000MPa級の超高張力鋼板を3カ所、1500MPa級の高張力鋼板を37カ所に適用したとする。
X-PACKは、CTBによって従来のCTP(Cell to Pack)と比べてバッテリー搭載効率を73%向上している。その効果もあって容量35.8kWhのバッテリーを搭載して、320kmの走行距離を確保できた。充電についても、50kWの急速充電を利用すれば34分で10%から80%まで充電できる。家庭用の200V電源を用いた普通充電にも対応している。
車載カメラとミリ波レーダーの組み合わせによる自動緊急ブレーキや先行車発進通知、車線逸脱防止などのADAS(先進運転支援システム)を標準装備している。エアバッグも、運転席と助手席それぞれにフロントエアバッグとフロントサイドエアバッグ、車室内の両サイドにカーテンエアバッグを標準で搭載している。なお、RACCOで採用した新たな先進機能としては、300Premiumに搭載する足元投影ガイド付きハンズフリースライドドアがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
EV後進国日本で勃発する軽EVを巡る争い、欧州新規格にも波及するか
2026年は日本のEV市場が新たな局面を迎える年になるかもしれない。その引き金になるのが、軽自動車タイプのEV、いわゆる軽EVの継続的な市場投入である。
BYDが日本市場に軽EVを投入する意図を考察する
BYDが日本専用設計の乗用軽EVを国内導入することを決定した。この決定は、合理性に乏しく、割に合わないように感じられる。にもかかわらずBYDは、なぜ日本市場に軽EVを投入するのだろうか。その意図を考察する。
BYDのプラグインハイブリッドシステムの全貌、日本市場は第4世代「DM-i」を投入
BYD Auto JapanがPHEVタイプのSUV「BYD SEALION 6」を発表。消費税込みで398万2000円からという価格設定もさることながら、世界で初めてPHEVを量産化したとする同社のプラグインハイブリッドシステムにも注目が集まっている。
バッテリー積んでも広さは健在、ダイハツ初の軽EVは守り抜いた積載性能で勝負
ダイハツ工業は軽商用バンタイプのEV「e-ハイゼット カーゴ」「e-アトレー」を発表。トヨタ、スズキとの共同開発のシステムを採用し、積載性能を死守した。ラストワンマイルの決定版を目指し月間300台からスタートする。
「硬く冷たいEV」のイメージを覆す、スズキらしさ全開の軽EVが2026年度に市販へ
スズキはジャパンモビリティショー2025で、2026年度中の軽EV市場投入計画を発表した。コンセプトモデルの「Vision e-Sky」は、スズキらしい親しみやすいデザインが特徴だ。
N-VANと同じEVシステムで走行可能距離は50km増、N-ONE e:は295kmに
ホンダは新型軽乗用EV「N-ONE e:」を発売した。ホンダの軽EVとしては商用車の「N-VAN e:」に続く第二弾となる。メーカー希望小売価格はベースグレードが269万9400円から。







