「モノづくり×研究」をどう教えるか 技術を社会に届けるために必要なこと:必要とされるモノづくりの追求(5)(2/2 ページ)
連載「必要とされるモノづくりの追求」では、研究開発と実際の現場/ユーザーとの間に生じるギャップを整理しながら、技術の価値をどこに置くべきかを問い直し、必要とされるモノづくりの在り方を考察する。第5回は、大学の研究教育の場で「モノづくり×研究」をどのように学生へ伝えるべきかを、スマートメカトロニクス研究室の実践を交えながら考える。
「めいじろうロボット化計画」という実践
こうした考え方を、学生たちが実践的に学ぶ機会の一つとなったのが、「めいじろうロボット化計画」です。
私たちの研究室では、モノづくりを実際に体験してもらうために、研究室内で行うゼミナールでもさまざまな取り組みを行っています。その一環として2025年に実施したのが、明治大学のマスコットキャラクターである「めいじろう」のぬいぐるみをロボット化する取り組みです。
この企画は、学生たちのアイデアから始まりました。教員が一方的にテーマを与えるのではなく、学生たち自身が「何を作るのか」「どのように実現するのか」を考え、プロジェクトとして進めていきました。
スタート後、学生たちは自らメカ、ソフトウェア、UIの各チームに分かれ、役割を決め、スケジュールを立てながら開発を進めてくれました。メカチームはロボットの構造や動作機構を検討し、ソフトウェアチームは制御や動作の実装を担当しました。UIチームは使用者との関わり方や操作方法を考えるなど、それぞれの専門性を生かしながら一つの完成形を目指しました。
せっかく取り組むのであれば、明確なゴールを設定したいと考え、ゼミナールの一環として行っている「学生未来プロジェクト」の成果発表の場でお披露目することを目標にしました。
2025年4月にスタートしためいじろうロボット化計画は、同年7月に神奈川県のロボット企業交流拠点「ロボリンク」で開催された「第2回 学生未来プロジェクト」でお披露目することができました。
わずか3カ月という短い期間でしたが、学生たちは主体的にプロジェクトを進め、試行錯誤を重ねながら形にしていきました。当日は、開発しためいじろうロボットについて学生たち自身が堂々と発表し、聴衆に向けて成果を伝えてくれました。
この取り組みで重要だったのは、単にロボットを作ったことだけではありません。学生たちが自分たちで課題を設定し、チームを作り、スケジュールを管理し、試作と改善を重ね、最後に外部の方々へ向けて発表できたことです。
めいじろうロボット化計画は、モノづくりの一連の流れを学生たちが実際に体験する機会となりました。研究室の中で考えるだけではなく、自分たちのアイデアを形にし、それを社会に向けて発信する場でもありました。こうした経験こそが、学生にとって大きな学びになったのではないかと思います。
このような経験を通じて、学生たちは、モノづくりが単に技術を形にする作業ではないことを少しずつ学んでいきます。自分たちで考え、手を動かし、うまくいかないことに向き合い、仲間と議論し、最後には外部の人たちに向けて発表します。こうした一連の過程の中に、モノづくりの面白さと難しさ、そして研究としての価値があるのだと思います。
モノづくり×研究とは何か
大学教員として筆者にできることは、学生に完成された正解を与えることではありません。むしろ、学生たちが自ら問いを立て、課題を見つけ、専門性を組み合わせながら形にし、社会との接点の中でその意味を考える機会をつくることだと考えています。
モノづくり×研究とは、社会の課題と科学をつなぐ営みです。そして、その営みを次の世代へ伝えていくことも、大学における研究教育の大切な役割です。
今回紹介しためいじろうロボット化計画は、その一つの実践例にすぎません。私たちの研究室では、学生未来プロジェクトや展示会への出展、地域イベントへの参加など、学生たちが研究室の外へ出て、社会と接点を持ちながら学ぶ機会をさらに広げようとしています。
最終回となる次回は、これからの社会を担う学生たちを育てる役目を与えられた筆者に何ができるのかについて、学生未来プロジェクトや未来イノベーションプロジェクトなどの取り組みを紹介しながら考えてみたいと思います。 (次回へ続く)
筆者プロフィール
伊丹 琢(いたみ たく)
明治大学理工学部電気電子生命学科 専任講師
スマートメカトロニクス研究室(伊丹研究室)主宰
1992年生まれ。2020年に博士号(工学、三重大学大学院工学研究科)を取得。2020年4月から2024年3月まで青山学院大学理工学部で助教を務め、2024年4月から明治大学理工学部電気電子生命学科に着任し、スマートメカトロニクス研究室(伊丹研究室)を主宰する。2022年4月から岐阜大学大学院医学系研究科博士課程(社会人・リハビリテーション学)に在籍。医療・福祉デバイスを中心とした、「現場で本当に必要とされる技術」を志向した研究開発に取り組む。
また、若者たちが輝ける未来社会を実現することを重要な使命と捉え、教育・社会連携活動にも積極的に取り組む。地方自治体や企業と連携した「学生未来プロジェクト」や「未来イノベーションプロジェクト」を立ち上げ、学生が実社会の課題に向き合いながら、研究開発・実証・発信までを経験できる教育研究プロジェクトを多数推進。企業・医療機関との共同研究、展示会への出展、地域社会との連携活動などを通じて、研究成果を社会に開く実践的な場づくりを行う。
⇒ スマートメカトロニクス研究室|伊丹琢|明治大学|神奈川県
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