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「専門性」は重要だが、深めるほど“必要とされるモノづくり”を難しくする!?必要とされるモノづくりの追求(4)(1/2 ページ)

連載「必要とされるモノづくりの追求」では、研究開発と実際の現場/ユーザーとの間に生じるギャップを整理しながら、技術の価値をどこに置くべきかを問い直し、必要とされるモノづくりの在り方を考察する。第4回は、現在の研究教育における専門性重視の構造と、“必要とされるモノづくり”との関係について考える。

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 これまでのコラムでは、「なぜ優れた技術が現場で使われないのか」「現場を理解した“つもり”が生むズレ」、そして「専門分野や担当部署を超えた多角的視点の重要性」について述べてきました。

 “必要とされるモノづくり”においては、工学だけでなく、医療/福祉/心理/安全性/制度/市場など、さまざまな視点が必要になります。しかし、実際にそのような多角的視点を持つことは容易ではありません。なぜなら、現在の教育システムそのものが、いわゆる専門家を育てる構造になっているからです。

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私たちは幼いころから「専門」を選び続けている

 現在の日本の教育では、高校や大学進学に向けて、早い段階から進路選択が始まります。まず高校では、文系/理系の選択があります。数学や物理を中心に学ぶのか、社会や文学を中心に学ぶのか――。この段階で学ぶ内容は大きく分かれていきます。

日本は高校の段階で文系/理系の選択がある
日本は高校の段階で文系/理系の選択がある[クリックで拡大] 出所:iStock/Seiya Tabuchi

 さらに大学進学時には、大学を選択するだけでなく、工学部/医学部/経済学部/文学部など、より専門的な分野(学部)を選択しなければなりません。また、例えば工学部の中でも、機械/電気/情報/化学/建築などへ細分化(学科)されていきます。

 大学進学後も、研究室を選択する段階で専門性はさらに細かくなります。例えば、同じロボット分野においても、制御/ロボット工学/機構設計/画像処理/AI(人工知能)/センシング/材料/生体計測など、それぞれ専門分野が存在し、研究室も分かれている場合がほとんどです。

 中学生までは、皆がおおよそ同じ教育を受けることができます。しかし、高校生以降は、進学するにつれて自身の専門分野を選択し続けなければならないのです。

 筆者が少し懸念しているのは、この進路選択という、人生において極めて重要な決定を行うタイミングが、あまりにも早いのではないかという点です。高校生といえば、まだ16歳前後です。成長過程の段階で、理系か文系かという大きな選択をするのは早過ぎるのではないかと思っています。大学選択や学部/学科選択も同様です。

 さらに、この文理選択は基本的に自己責任の下で行わなければいけません。この辺りは今回のテーマから少し外れますので深くは述べませんが、筆者が大学教員として日々学生と接する中で、今後考えていくべき課題の一つではないかと感じています。

 もちろん、専門性そのものは極めて重要です。高度な技術や新しい研究成果は、この深い専門性によって生み出されているのも事実です。一方で、その過程の中でわれわれは無意識のうちに、「自分の専門以外は分からない」という状態へ近づいていく可能性もあります。

専門性は重要であるが

 ここで筆者は、専門性そのものを否定しているわけではありません。むしろ専門性は、研究者や技術者にとって大きな武器となります。筆者自身も工学を専門とし、メカトロニクス技術を軸に研究開発を行っている一人です。

 一方で、最近特に感じることは、あまりにも専門性が重視され過ぎていて、多角的な視点や総合力が軽視されていないかという点です。筆者は、さまざまな分野の方と交流したり、学会などで講演したりする際に、よく「あなたの専門は何か?」と聞かれることがあります。そのようなとき、筆者は「モノづくり」と答えるようにしています。

 それは、「何を専門としているか」よりも、「何を解決したいか」の方が重要ではないかと考えているからです。工学という大枠までは否定しませんが、それ以上に専門領域を細分化し過ぎる必要が本当にあるのか、という疑問を抱いています。

 あまりにも自身の専門分野を狭めてしまうと、その専門分野の研究テーマや研究の方向性が、社会のニーズや関心から離れてしまったり、課題解決の方向性から逸脱し過ぎてしまったりする可能性もあります。解決しなければならない課題が分かったとしても、「自身の専門領域ではないから」と諦めてしまうのは、とてももったいないことです。

 さらに、新しい技術の登場によって、これまで高い専門性が求められていた領域の在り方が変化する可能性もあります。最近では、生成AIの影響を受ける職業群として数学関連職などが挙げられることもありました。

 もちろん、だからといって専門職そのものが否定されるわけではありません。ただ、自分自身の強みとなる領域を必要以上に狭めることもないのではないかと筆者は考えます。

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