“中国ヒューマノイド革命”はなぜ起きた、異業種や大手テックが動かす市場の今:中国ヒューマノイド最新動向(前編)(2/2 ページ)
中国のヒューマノイドロボット市場は、劇的なパラダイムシフトの渦中にある。出荷台数は前年比約7倍、世界シェアは8割に達し、異業種企業の参入で本体企業数は倍増した。野村総合研究所の李智慧氏による、量産化フェーズへ突入した中国市場の急成長を支えるマクロ動向の解説を紹介する。
スマホ、家電など異業種からヒューマノイド市場へ参入
このような急速な拡大を支えるのが、活発な投資と、異業種企業の参入だ。中国におけるロボット産業の資金調達は、これまで政府主導による補助金が中心であると考えられていた。しかし実態を分析すると、政府系ファンドによる投資は全体の25%にとどまっている。残りの多くは民間資本であり、とりわけテック企業やメーカーをはじめとする産業系資本からの投資が活発化している。テック系ではMeituan(美団)やAlibaba(アリババ)、メーカー系ではXiaomi(シャオミ)やCATL(寧徳時代)などが、各ロボット企業に資金を投じている。
また投資にとどまらず、自動車、スマートフォン、家電など異業種からヒューマノイドロボット開発に乗り出し、市場へ参入する動きが相次いでいる。自動車企業のCHANGAN(長安汽車)や、電子機器メーカーのHONOR(栄耀)、家電大手のMidea(美的集団)などがその代表例だ。
Mideaは、家電市場での価格競争が激化するなか、自動化やロボット技術といった新規事業への多角化を模索してきた。同社は自動化生産分野で培った知見から研究開発をスタートさせ、2022年にドイツの産業用ロボットメーカーであるKUKAグループを買収。2025年12月には、世界初となる(同社による)6本腕の車輪型スーパーヒューマノイドロボット「Miro U」を公開した。これを洗濯機工場へ実証導入した結果、ライン切り替え効率の30%向上と設備設置面積40%低減を達成した。
HONORは、2025年に「5年間で100億ドルを投資し、世界をリードするAI端末エコシステム企業への転身」を宣言した。同社はスマートフォン開発で培った放熱技術を応用し、ロボットの関節部分の液冷放熱技術を開発した他、スマホ向け高性能バッテリーを応用することで、エネルギー密度を従来比40%向上させることに成功した。当面の間は、オフライン店舗でのスマート店員としての活用を進めるが、将来的に知性と感情を兼ね備えたロボットへと領域を拡大する狙いだ。
2024年比でヒューマノイド企業数倍増、世界の半数が中国勢に
このような積極的な市場参入を背景に、中国国内でヒューマノイドロボット本体を手掛ける企業数は、2025年に前年比で倍増し約200社に達した。李氏の分析によると、現時点における世界全体のロボット本体企業数のうち、約半数を中国勢が占めるほどの規模になっているという。
中国のヒューマノイドロボット産業は、強固な産業チェーンと活発な投資をベースに、急速に市場を拡大させている。1年前のデータや状況と比較しても、その進化スピードの速さがうかがえる。
では、これほどまでに急増し進化したロボットたちは、実際の社会でどれほど通用するのだろうか。そして、圧倒的な物量とスピードで独走する中国に対し、日本はどのように立ち向かうべきなのか。続く後編では、ロボット基盤モデルを巡る各プレイヤーの戦略、そして日本が突きつけられている課題と巻き返しに向けた生存戦略について深掘りしていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
黒船「フィジカルAI」襲来 日本におけるヒューマノイド開発の最適解とは
アールティが、産業技術総合研究所、川田テクノロジーズ、川崎重工業などと共同で「フィジカルAI勉強会」を開催。ヒューマノイドの実用化に必要不可欠な技術としてフィジカルAIという言葉そのものや技術成熟度への認識については混乱が見られる中、今回の勉強会は現時点でのフィジカルAIの捉え方を共有することを目的に開催された。
なぜフィジカルAIの象徴がヒューマノイドなのか@2025国際ロボット展
「2025国際ロボット展(iREX2025)」では、ヒューマノイドがこれまでになく注目を集めた。本稿では前後編の2回にわたって、会場横断でヒューマノイドの動向をレポートする。前編では中国勢を中心に紹介した。今回の後編では、日本勢の動向にスポットを当てる。
急成長中の中国ヒューマノイド大手AgiBotの技術戦略
菱洋エレクトロとリョーサンがセミナー「“ロボットが自分で学ぶ未来を体験” 〜実機と仮想環境が融合する次世代のロボット技術〜」を開催。本稿では、同セミナーに登壇した中国のヒューマノイド企業AgiBotで東アジア事業本部長を務める張赫氏の講演をレポートする。
中国最新ロボット事情〜勃興するヒューマノイド〜
中国のロボット分野、とりわけヒューマノイド(人型ロボット)への注目が高まっている。中国の大手テックメディア36Krの日本語版である36Kr Japanが、その現状をレポートする。
ヒューマノイドとAMRが連携、山善が“未来の倉庫”デモ
山善は2025国際ロボット展で、ヒューマノイドロボットとAMRの連携デモを公開した。共通基盤により異機種連携を実現。2026年にはデータ生成センターを稼働させ、現場実装を加速する。
中国ヒューマノイドの“爆速”実装、カギは「ロボットフレンドリー」な現場か
中国の大手テックメディア36Krの日本語版36Kr Japanによる、中国のヒューマノイドに関する最新レポート。これまでの試作段階から、現場で試行錯誤を繰り返しながらデータと実績を積み重ね、“商用化フェーズ”へと移行しつつある現状を伝える。


