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海水から脱炭素で資源を獲得! 三菱電機らの新技術とは……脱炭素(2/3 ページ)

三菱電機はVTT Technical Research Centre of Finlandと共同で、海水を介し大気中からCO2を回収する「Direct Ocean Capture(DOC)」システムの基礎技術開発を完了した。同システムが「エネルギー安全保障」や「資源循環」に貢献するワケとは……

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VTTの役割

 VTTはフィンランドを拠点とする研究機関で、量子技術やマイクロエレクトロニクス、持続可能な材料、クリーンプロセスなどの技術開発に注力している。

 VTT 副社長のAntti Arasto氏は「われわれの戦略は3つの柱を通じて成果を生み出す。1つ目はスタートアップの支援で、専門知識やインフラを活用し、グローバル企業の構築をサポートしている。2つ目は既存事業の刷新で、企業が新たな成長機会を発見し、研究を実用的なソリューションへ転換する支援を実施している。3つ目は社会のレジリエンス強化で、持続可能な未来を支えるエネルギーや重要素材のイノベーションを推進している」と話す。

 加えて、「イノベーションは、基礎研究が産業界と連携し実用的な成果に結びついたときに生まれる。VTTは長期的な研究と技術の検証/スケールアップを行い、構想から実用化までのプロセスを加速させている。その好例が三菱電機と共同で行っているDOCプロジェクトだ」と触れた。

VTTの取り組み
VTTの取り組み[クリックで拡大] 出所:三菱電機

海水は体積比で大気の約140倍のCO2を貯蔵

 DOCシステムの開発に取り組む背景について、三菱電機 DOCプロジェクト推進グループマネジャーの小松崎優治氏は「パリ協定で目標として掲げられた『平均気温上昇の1.5℃未満抑制』を達成するためには、今世紀末までに大気中から100億〜1000億トン(t)のCO2を除去する『CDR(Carbon Dioxide Removal:二酸化炭素除去)』が必要だ。DAC(直接空気回収)や植林など、さまざまな手段があるが、これらを大規模に行うためには、コストやエネルギー、土地利用で課題がある」と述べた。

DOCシステム開発の背景
DOCシステム開発の背景[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 その上で、「そこで三菱電機が着目したのが『海』だ。海水は体積比で大気の約140倍のCO2を蓄えており、高濃度の場所から回収する方が効率的だと考えている。大気と海水表層のCO2濃度は『ヘンリーの法則』によって必ず釣り合う性質を持つ。つまり、CO2を取り除いた海水を海に戻せば、空気中と濃度差が生じ、自然の力で再び大気中から海水へCO2が吸収される」と続けた。

単一の特効薬はなし
単一の特効薬はなし[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 海洋CDRの1つであるDOCシステムのプロセスは以下の通りだ。まずは、高濃度の炭素を含む海水を取水し、水素イオンを導入して海水の酸性度を一時的に上昇させることで、炭酸イオンや重炭酸イオンなどを気体のCO2に変換して、回収する「酸性化アプローチ(acid-DOC)」を行う。酸性化アプローチは、CO2を固体(鉱物性炭酸塩)で回収する「塩基性化アプローチ(base-DOC)」と比較して、CO2の貯留だけでなく、合成燃料や工業原料への変換が容易であり、将来的なCO2利活用の実現にも貢献する。

DOCシステムのプロセス
DOCシステムのプロセス[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 続いて、海水とCO2を分離させる装置を使用し、CO2を回収。次に、酸性化させた海水に中和処理を行い、海洋生態系への影響を抑えた状態で、海に戻す。戻された海水はCO2が抜けているため、大気中と海水との間でCO2の濃度差が生じる。その後、大気中と海水表層のCO2の濃度は必ず釣り合うという性質によって、大気中から海水にCO2が溶け込み、大気中のCO2が除去される。

 小松崎氏は「大気中と海水中のCO2と重炭酸イオンの比率が一定になるまで、大気中から海水中にCO2が取り込まれる。このプロセスを繰り返すことで、大気中から効率的にCO2を除去できる。加えて、海水のCO2濃度の上昇によって生じている海洋酸性化という別の社会課題の解消にも貢献したい。ただし、このプロセスによって本当に海洋酸性化が解消できるかは今後、科学的に検証していく」と述べた。

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