既存船が自動運航船に!「第二ほくれん丸」の操舵室に見るレトロフィットの妙:イマドキのフナデジ!(14)(3/3 ページ)
「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第14回は、既存のRORO船に自動運航機能をレトロフィットで追加した「第二ほくれん丸」の操舵室の構成や、導入された自動運航システムの構成などについて解説する。
推進側の制御を担う船速馬力制御装置はナブテスコ製
一方、推進側の制御を担うのが、左舷側に配置されたナブテスコ製船速馬力制御装置「TELEGRAPH AGENT MTA-800V(以下、MTA-800V)」だ。ここでも、自動運航のために推進制御系を一から置き換えたのではなく、既存のエンジンテレグラフ系の上位に自動制御装置となるMTA-800Vとパスプランナーを連携した。
MTA-800Vの役割は、パスプランナーから送られる航路に船を追従するべく、主機回転数(を定めるテレグラフ操作)と可変ピッチプロペラの翼角を自動で調整することにある。PT900が“ハンドル”なら、TELEGRAPH AGENT MTA-800Vは“アクセル/ブレーキ”に相当する。舵側と推進側の双方が自動制御可能になることで、初めてパスプランナーが立案(そして現時点においては当直航海士が承認)した航路に合わせて船を操船できるようになる。
操舵室中央の「PT900」の左舷側に並ぶのが、ナブテスコ製船速馬力制御装置「TELEGRAPH AGENT MTA-800V」と、その隣の既設エンジンテレグラフコンソール。MTA-800Vはパスプランナーの指令を受けて主機回転数や可変ピッチプロペラ翼角を自動調整するなど、既存の推進制御系に自動運航機能を追加した構成となっている[クリックで拡大]
なお、自動運航システムは、常に同じ条件で同じ精度を発揮するわけではない。そのため、システムの稼働状態を把握し、安全に使用できる状態かどうかを判断する機能が必要になる。第二ほくれん丸では、このステータス管理を担うCIM(Central Information Management)を日本無線が担当している。
CIMは、GPSなどの冗長性やシステム全体の健全性を監視する。操舵室での説明では、GPSを2系統搭載している本船で片方に異常が生じた場合、冗長性が失われたとして、自動運航システムの安全状態を1段階下げるとされた。この場合、システムは人間による監視や介入を前提とする運用に移行する。
小型ボートのような対象の検知についても、センサー、AIS、カメラによって条件次第では対応できる一方、波浪や降雨などで条件が悪い場合には難しくなる。その場合は、完全な自動運航を継続するのではなく、システムのステータスを変更し、部分的な運用に切り替えるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫連載「イマドキのフナデジ!」のバックナンバー
“生まれたときから自動運航船”な「げんぶ」の操舵室はどうなっているのか
「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第13回は、設計段階から自動運航機能の搭載を前提に建造された内航コンテナ船「げんぶ」の操舵室の構成や、導入された自動運航システムの構成、航行判断アーキテクチャなどについて解説する。
旅客船の「レベル4相当」自律運航の実力は? 操船ブリッジかぶりつきレポート
「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第12回は、国際両備フェリーの旅客船「おりんぴあどりーむせと」を用いた「レベル4相当」自律運航の実証デモについて、操船ブリッジからのかぶりつきレポートをお送りする。
水素混焼タグボート「天歐」は“未来の実験船”ではなく“最初の現実解”
「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第11回は、港湾で大型船の入出港を支えるタグボートのゼロエミッションに向けて開発された水素混焼タグボート「天歐」について解説する。
操船精度が施工精度を決める!海底通信インフラを支えるケーブル敷設船「SUBARU」
「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第10回は、インターネット通信を支える光ファイバーケーブルを海底に敷設する海底ケーブル敷設船「SUBARU」について解説する。
海上自衛隊の新型艦艇「哨戒艦」に見る省人化と“フナデジ化”
「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第9回は、海上自衛隊が計画を進めてきた新型艦艇である「哨戒艦」が目指す省人化の必要性、そして海上自衛隊艦船における自律運航技術導入の現状について整理する。

