既存船が自動運航船に!「第二ほくれん丸」の操舵室に見るレトロフィットの妙:イマドキのフナデジ!(14)(2/3 ページ)
「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第14回は、既存のRORO船に自動運航機能をレトロフィットで追加した「第二ほくれん丸」の操舵室の構成や、導入された自動運航システムの構成などについて解説する。
自動運航システムの航海策定を担うAPUは日本無線製
操舵室内部を見渡すと、第二ほくれん丸の自動運航対応が、操舵室を全面的に作り替えるような改装ではなく、既存の操船機材を残しながら自動運航実現に必要な機能を後付けで積み上げる手法を採用していることが分かる。操舵室右舷側に自動運航関連コンソールを新設しているが、左舷側や中央操船区画を見ると、自動運航化は右舷側だけで完結しているのではなく、既存の航海、操船、主機制御系に新しいレイヤーを重ねる形で実装されていることが把握できる。
右舷側コンソールには、右から航海策定を担うAPU(Action Planning Unit)、ECDIS(電子海図)、既設のXバンドレーダー、VHF(超短波)無線機、もう1台のECDIS、Sバンドレーダーが並ぶ。さらに操舵室中央のオートパイロットを挟んで、その左舷側に推進制御へ接続する機材が並ぶ。
第二ほくれん丸の操舵室を右舷側から撮影。手前からパスプランナー、ECDIS、Xバンドレーダー、VHF、ECDIS、Sバンドレーダーが並び、奥のハンドル付きコンソールが中央操船区画のオートパイロット「PT900」[クリックで拡大]
第二ほくれん丸の自動運航システムでAPUとして採用しているのが、日本無線製の「パスプランナー」だ。レーダーやAIS(自動船舶識別システム)、カメラ映像などのセンサー類から周囲状況を把握した上で、どのような航路で走れば安全かつ効率的かを判断し、避航を含む航路案を提示する。ここで生成した航路案の妥当性を検証した上で採用し、舵制御系や推進制御系に渡すことで実際の操船に反映する。
パスプランナーの画面表示。青の破線が本来の計画航路、赤線が避航のために立案/採用された航路を示す。周囲の他船は、緑が危険度の低い船、オレンジが衝突可能性の高い船として表示されている。左下には、後述するCIMのウィンドウが見える[クリックで拡大]
採用した航路案を舵制御側で受けるのが、中央操船区画に置かれたYDKテクノロジーズ製オートパイロット「PT900」だ。操舵輪を中心に据えたこの装置は、従来型の操船装置の延長に見えるが、第二ほくれん丸の自動運航システム導入に合わせてパスプランナーと連携しており、採用された航路の方位情報を受け取って、その航路上に“できるだけ正確”に船を乗せるよう舵角を自動調整する役割を担っている。
“できるだけ正確に”というのは、自動車と違って船は風や波の影響などの外乱を常に受け、同じ舵角を保っていてもコースから外れたり、逆に回頭し過ぎたりするためで、単純な保針ではなく、変動する外乱の中で航路追従を維持する制御が重要になる。加えて、航路追従の正確性と省エネ性のバランスを取るよう調整したとの説明もあった(大回りするとそれだけ燃料を消費する)。
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