「EVはオワコン」なのか? 消費者の半数がガソリン車を選択、専門家の見解は:電動化
EYは、自動車購入のグローバル消費者調査「2025年度 EY Mobility Consumer Index」の結果を発表した。消費者の半数がガソリン車を選択し、EV人気は足踏み状態にあるという。今後の本格普及期のシナリオは。
EYは2026年4月23日、自動車購入における消費者の動向などをまとめたグローバル調査「2025年度 EY Mobility Consumer Index(MCI)」の結果を基に、自動車業界の動向を読み解く勉強会を開催した。MCI調査は2020年に開始され、6回目となる今回は世界32市場の延べ約2万1000人を対象に実施した。ガソリン価格が高騰する中、ガソリン車、EV(電気自動車)、ハイブリッドの選択構造の変化や、EV普及を阻む消費者の懸念事項が浮き彫りになった。
EV優遇措置撤廃で、3割強がEV購入を延期
調査結果によると、消費者の半数が「今後24カ月以内に車の購入を予定している」と回答した。そのうち、ガソリン/ディーゼル車を選ぶ割合は2024年度の37%から50%へと上昇した。一方フルEVを選ぶ割合は世界的に低下し、同24%から14%へ落ち込んでいる。ハイブリッド車は同21%から16%と、比較的緩やかな減少にとどまった。
「EV購入の延期/再検討」を選択した消費者は、全世界で36%、日本では32%に上った。EV優遇措置の撤廃や排出規制の緩和案など地政学的要因を背景に、消費者の関心はガソリン/ディーゼル車へ回帰している傾向にある。OEM(自動車メーカー)各社も、EV以外の新型や改良型の投入を拡大している状況だという。
調査結果について、EY ストラテジー・アンド・コンサルティング 自動車・モビリティ・運輸・航空宇宙・製造・化学セクター シニアマネージャーの祝出洋輔氏は次のように指摘する。
「EV普及初期には『環境に優しい先進的な車』という付加価値が先行し、多少割高であってもEVを選ぶ層が一定数存在した。しかし現在では、車両の本体価格だけでなく、電気代、補助金の有無、将来的な下取り価格といった実質的な維持費が、ガソリン車やハイブリッド車と同列に並べられ、より厳格に比較されるようになっている」(祝出氏)
消費者がトータルコストの面からシビアに見極めるようになった結果が、今回のエンジン車志向の高まりやEVの購入見送りに表れていると分析した。
EV購入の懸念事項は地域で差、購買は依然「対面」も重視
EVを購入しない層が挙げる懸念事項としては、走行距離が29%、充電インフラの不足が28%、バッテリー交換費用が28%と並んだ。充電に関する具体的な課題としては、ステーション探しや待ち時間の長さ、充電費用の高さなどが挙げられている。懸念事項には地域差も見られ、北中南米では充電インフラの不足、欧州では走行距離への不安、アジア太平洋では充電設備の信頼性や品質がそれぞれ懸念事項のトップとなった。これについて祝出氏は、「それぞれの地域で車の使い方や走行距離が違うことや、各国の充電インフラの拡充性が異なることが要因として考えられる」と推測した。
自動車の購買プロセスについては、オンラインチャネルでの購入が拡大しており、2024年の24%から30%へと増加した。ディーラーやショールームでの対面購入は減少傾向にあるものの、購入者の41%は対面での購入を支持している。特にEVの購入者は、ガソリン/ディーゼル車よりもわずかに対面購入を好む傾向が見られた。祝出氏は、「EVという新しい商品に対して、詳細な商品知識や充電に関する確実な説明を求め、対面でのやりとりを重視しているためではないか」と分析した。
「EVオワコン」論は一時的な揺り戻し、今後は本格普及へ
今後、EV市場はどのように変化するのか。昨今取り沙汰される「EVオワコン」という言説について、祝出氏は、製品普及のプロセスにおける一時的な「揺り戻し」であるとの見解を示した。
「現在はSNSなどを通じて『EVオワコン』といった否定的なイメージが先行して拡散され、消費者の間で特定のネガティブな先入観がついている。しかし同時に、反論や冷静な評価も現れ始めており、情報の混乱が収束して一段落する状態になれば、再び本格的な普及期へ移行するだろう」(祝出氏)
国によって政策や普及スピードは異なるものの、世界全体でのEV普及の流れは止まらないとの見方を示した。消費者のブランド動向については、米国ブランドへの関心が低下し、欧州ブランドへの関心が上昇、中国ブランドは2024年度から維持される結果となった。祝出氏は、「足元の販売数には波があるものの、BYDをはじめとする中国メーカーが間違いなく力を持ち始めている」と語った。
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