小型船舶でも進む操船のシステム化、環境対応も浸透――ボートショー2026レポート:船も「CASE」(3/3 ページ)
2026年3月19〜22日の4日間、国内最大級のマリンイベント「ジャパンインターナショナルボートショー2026」が神奈川県横浜市内で開催された。本記事では、メイン会場のパシフィコ横浜の各ブース展示製品から小型船舶における技術動向を中心に紹介する。
海洋マイクロプラスチック回収機能を備えた船外機――スズキ
スズキのマリン事業は、小型船外機分野で培った高効率高信頼性技術を基盤に、近年は環境対応と耐久性向上を両立する方向で進化を続けており、機関単体の性能向上にとどまらず、使用環境そのものへの影響低減を視野に入れた技術開発に取り組んでいる。
展示ブースには海洋マイクロプラスチック回収機能を備えた船外機を展示した。冷却水の取り込み系統を活用して航行中に海水中の微細なプラスチック粒子を回収する仕組みで、推進装置が環境浄化機能を兼ねるという。船外機の普及台数を考慮すれば、分散型の環境対策として一定のインパクトを持つ取り組みといえる。
加えて、参考出品としてバイオエタノール対応船外機も展示していた。燃料の多様化に対応することで、カーボンニュートラルへの適応を図るもので、既存の内燃機関を生かしながら脱炭素化を進める現実的なアプローチと位置付けている。
さらに、エンジンブロックには独自のアルマイト加工を採用することで、耐食性や耐久性を向上させ、過酷な海洋環境下における長期使用を支える技術基盤を強化している。
アンチローリングジャイロのGUIをデジタル機器に出力――東明工業
東明工業では、小型船舶で問題となる船体の動揺を減衰させるアンチローリングジャイロ(ARG)のGUIをデジタル機器へ出力するインタフェースユニットを展示した。従来、ARGの情報は専用のアナログ出力ユニットを介して、これまた専用の表示機器に接続する必要があり、システム構成は専用機器に限定されていた。
これに対し本ユニットは、HTTPベースで情報を出力する構成を採用しているおかげで、表示側がデジタル画像出力やWebベースの表示機能に対応していれば(=Webブラウザさえ使えれば)、特定の専用機器に依存しないばかりか情報の統合表示も可能になる。現時点で接続対象は古野電気の一部製品に限定しているが、これはあくまで対応機器側の仕様による制約であり、インタフェースそのものは極めて汎用性の高い設計となっている。
重要なのは、このユニットが「機器接続」ではなく「データ配信」としてARGを定義している点にある。HTTPという汎用プロトコルを採用したことで、将来的にはMFD(マルチファンクションディスプレイ)やタブレット端末、クラウド連携システムなどへの展開も視野に入る。
ARGのGUIに古野電気タッチパネルGUI「NavNet」への対応を訴求しているが、内部の仕組みとしてはHTTPサーバを立ち上げているので、Webブラウザを利用できるデバイスなら高い汎用性を持つといえる[クリックで拡大]
広視野のカラー液晶レーダーに加え「みるたん」も訴求――光電製作所
光電製作所のブースでは、広視野角表示LCD(液晶ディスプレイ)を採用したカラー液晶レーダー「KRM-1200」「KRM-1500」の出品に加え、同社のオリジナルキャラクターも訴求していた。
このキャラクター「みるたん」はレーダーや魚群探知機といった専門性の高い製品群を、より親しみやすく伝えるために導入されたものという。従来、B2B色の強い航海機器分野においては、技術優位性が前面に出る一方で、一般来場者への訴求力に課題があった。こうした背景から、展示会や広報、販促物などでキャラクターを活用し、ブランド認知の拡大とコミュニケーションの柔軟化を図っている。
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