動画を撮影して手渡せる富士フイルムの新型チェキは、どうやって生まれたのか:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(40)(2/4 ページ)
富士フイルムは2026年1月に「チェキ」の愛称で知られるインスタントカメラ「instax」の「Evoシリーズ」に動画撮影機能を追加した「instax mini Evo Cinema」を発売した。この製品はどういうコンセプトで開発されたのだろうか。その舞台裏を小寺信良氏が伝える。
縦型のボディーデザインをなぜ採用したのか
小寺 ボディーデザインに関しても、従来の横に平たい写真機型ではなく縦型のスタイルになったわけですけど、そこはやはりこれまでのシリーズとは差別化したいということだったのでしょうか。
高橋氏 明確に(差別化のために)分けようというだけではなくて、動画を撮るものとしてどうあったら使いやすいかという純粋なプロダクトデザインとしての観点で考えました。
静止画は一瞬を撮るので、スチルカメラの撮り方で撮るのは作法として分かりやすいですが、動画だとカメラをずっとキープする必要があります。実際に動くものを撮ることを考えた時に、より手軽に撮れるようにするには両手ではなくて片手の方が、その対象物に対して柔軟に対応ができます。その辺りに着眼していきました。
小寺 形状は変わりましたが、従来製品とサイズ的にはそれほど変わらないのですか?
高橋氏 そうですね。高さ的にはほぼ変わりません。結局インスタントカメラは、フィルムパックを入れないといけないので、そのスペースは確保しなければなりません。その中でできるアプローチをいろいろ考えた時に、富士フイルムが持っている資産として過去の「フジカ シングル-8」という8mmフィルムカメラがあったことなども考えました。それも1つのアイデアとして、どういう形に落とし込めるかというのを検討した中で、この「縦型で片手で持てる」という形が生まれました。
小寺 縦型デザインのDVカメラは過去にありましたが、液晶画面が横に開く形が中心でした。今回、後ろからのぞくスタイルにしたというのは、どういう考えがあったんですか?
高橋氏 instax mini Evo Cinemaは後部の液晶画面で見て撮影するだけでなく、ファインダーアタッチメントを付けて、のぞくスタイルにも対応できるようになっています。instaxでもEvoシリーズは没入体験を大切にしているので、カメラの1つの醍醐味(だいごみ)として、モニターを開いて見るよりは、のぞいて撮るという方が、所作を含めて楽しい体験になるかなと考えています。
小寺 デザインが黒ベースでメタリックな感じもあり、従来のEvoシリーズと比べて、武骨なイメージになっているように見えますが、これはどういう狙いがあったんでしょう?
高橋氏 狙いとしては主に2つあります。1つは、時代をタイムトラベルできるようなコンセプトなので、昔の懐かしいデザインだけにしてしまうと、時代感の幅が出ません。そういう意味で今回のデザインは、いろんな時代の人が見た時に、懐かしいと思える以外にもさまざまな要素をちりばめています。
その時代の何らかのカメラのモチーフを感じる方もいらっしゃれば、もう少し若い方からするとお父さんが使っていた何かしらのカメラっていう風に感じたりするかもしれません。また、本当に若い方からすると、こうした全ての要素が逆に新しく感じることもあるかもしれません。世代によって少しずつ感じ方が違うようなエッセンスをうまく混ぜたデザインにしたつもりです。
もう1つが、男性が持ち歩きたくなるような、男心をくすぐるようなデザインをうまく生かしたいなと考えました。レンズリング部分に金属を使ったり、細かなパターンを入れたりして、精緻な作り込みという印象や本格感みたいなイメージを感じていただけるようにしたところがポイントになります。
操作面も同じような考えです。マニュアル車のように少し難しいものを操っているという感じが欲しいじゃないですか。実際の操作はダイヤルを回すだけで、簡単ですが、操作したくなる雰囲気や操れている感覚をどう演出するかはかなり準備して、さまざまなパターンを用意して形にしていきました。
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