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動画を撮影して手渡せる富士フイルムの新型チェキは、どうやって生まれたのか小寺信良が見た革新製品の舞台裏(40)(1/4 ページ)

富士フイルムは2026年1月に「チェキ」の愛称で知られるインスタントカメラ「instax」の「Evoシリーズ」に動画撮影機能を追加した「instax mini Evo Cinema」を発売した。この製品はどういうコンセプトで開発されたのだろうか。その舞台裏を小寺信良氏が伝える。

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連載「小寺信良が見た革新製品の舞台裏」趣旨

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今までにない新しい製品のアイデアや発想はどこから生まれてきたのか。映像系エンジニア/アナリストの小寺信良氏が商品企画や設計・開発の担当者へのインタビューを通じ、革新製品の生まれた舞台裏に迫る。

⇒連載「小寺信良が見た革新製品の舞台裏」のバックナンバー


 富士フイルムの「チェキ」といえば、インスタントカメラの代名詞ともいえる製品だ。写真をその場でプリントして渡せることで、世界に1つしかない写真で濃密なコミュニケーションを形成する、一風変わったコンセプトで定着した。

 現在はバリエーションを広げ、一般のデジカメのようにメモリ記録した後にプリントできるものや、写真と一緒に録音もできるもの、プリンタだけ独立したものなど、さまざまなバリエーションで展開されている。

 そんな中で2026年1月末に登場したのが、動画も撮影できる「instax mini Evo Cinema」だ。最大の特徴は、「1930」から10年刻みで「2020」まで、それぞれの時代を象徴する画質で撮影ができる「ジダイヤル」機能である。

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「instax mini Evo Cinema」[クリックで拡大] 出所:富士フイルム

 動画の仕様も変わっている。まず動画は15秒しか撮れない。その代わり、録画ボタンを押している間だけ撮影されるという「つなぎ撮り」ができる。撮影した動画は、プリントした写真に付けられたQRコードをスマホで読み込むと、スマホ上で共有できる。また撮影スタイルも、写真機のように平たいものを両手で持つのではなく、片手で縦に持つというスタイルになっている。

 この高画質時代に、あえて古臭い映像が撮れる機能を持たせ、メモリさえあればいくらでも撮影できる時代にあえて制限を付けて動画を撮影させるというのは、これまでになかった発想だ。

 今回はこうしたカメラが登場した背景や、その意義などについて開発チームの皆さんにお話を伺うことにした。お話いただくのは、富士フイルム イメージングソリューション事業部で商品企画を担当された嶋泰寿氏と、同社デザインセンターでプロダクトデザインを担当された高橋慶一郎氏(高は正式には「はしごだか」)だ。

 古さと新しさが逆転したようなカメラは、どのような経緯で誕生したのだろうか。

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「instax mini Evo Cinema」の商品企画を担当した富士フイルム イメージングソリューション事業部の嶋泰寿氏(左)と、プロダクトデザインを担当した同社デザインセンターの高橋慶一郎氏(右) 出所:富士フイルム

今なぜinstaxに動画機能を採用したのか

小寺 インスタントカメラとして一定の市場を確保しているinstaxで、なぜ動画対応しようと思われたんでしょうか?

嶋氏 われわれとしては、instaxを単なるカメラではなく「コミュニケーションツール」と位置付けています。そのきっかけになる体験をどう広げていけるかを考えてきました。

 これまでにも、連写写真のような形で動画を撮って、ベストショットをプリントできるという製品が過去にはありました。また、静止画に音を付けるというLiPlayシリーズというカメラを2019年から出しています。このように、少しずつ写真の楽しみ方のプラスアルファとなるものを考えていく中で、次に踏み込める領域として「次は動画だ」というのが、ちょうどこのタイミングで来た感覚です。

 技術的には、動画対応自体はもっと早くやろうと思えばできましたが、コミュニケーションを軸に考えていく中で、どうやったらユーザーの方に楽しんでいただけるか丁寧に企画、検討を進めました。

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2次元コードを静止画と共にチェキプリントとして出力[クリックで拡大]出所:富士フイルム

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