複雑化する安全保障貿易管理、日立ソリューションズがAIエージェントで効率化:製造ITニュース
日立ソリューションズは、製造業をはじめ350社以上に導入されている「安全保障貿易管理ソリューション」向けに、顧客審査や該非判定の業務を支援するAIエージェントの販売を開始すると発表した。
日立ソリューションズは2026年4月15日、オンラインで会見を開き、製造業をはじめ350社以上に導入されている「安全保障貿易管理ソリューション」向けに、顧客審査や該非判定の業務を支援するAI(人工知能)エージェントの販売を開始すると発表した。地政学リスクの高まりにより輸出管理規制が世界各国で複雑化しており、顧客審査や該非判定の業務負荷が急速に高まっている。AIエージェントにより判断の根拠になるレポートを自動作成することで、これらの業務の負荷低減と判断品質の平準化が可能になるという。今回のAIエージェントを契機に、安全保障貿易管理ソリューションの導入累計を2030年度までに550社まで伸ばしたい考えだ。
同社 執行役員 産業イノベーション事業部長の添田知子氏は「米国、EU、中国、そして日本において貿易管理の法規制が強化されており、これらの法規制に迅速に対応することも求められている」と語る。これらの法規制に対応するための安全保障貿易管理業務は複雑化し業務負荷も増大しているわけだが、企業は専門知識を持つ人材を十分に雇用できているとはいえない状況だ。
日立ソリューションズは2009年から安全保障貿易管理ソリューションを手掛けており、製造業を中心に350社以上に導入するなど実績がある。「このソリューションではユーザー会を立ち上げて機能強化を図ってきたが、2026年2月開催のユーザー会で実施したアンケートでは8割以上のユーザーがAI活用に関心を寄せているという結果が出た。そこで、米国のグループ会社の輸出管理業務で実際に適用することで検証してきたAIエージェントの提供を始めることを決めた」と説明する。
カスタマーゼロで開発した社内活動の成果を適用
日立ソリューションズの安全保障貿易管理ソリューションは、取引先が安全保障上のリスクを持たない相手なのかを確認する「顧客審査業務」や、製品や技術が輸出規制の対象に該当するかを判断する「該非判定業務」、取引先や製品/技術、仕向け先、用途を総合的に確認して取引の可否を判断する「取引/出荷審査業務」などから構成される安全保障貿易管理の業務を統合管理するためのものだ。
今回発表したAIエージェントは顧客審査業務向けと該非判定業務向けの2つに分けられる。まず、顧客審査業務向けでは、公開情報や独自データベースから必要な情報を収集/照合し、企業の貿易コンプライアンス上の懸念を確認する。さらに、判断結果と根拠を整理した企業レポートを自動生成する。
取引に関わる各部門は、このレポートを調査段階で参照すれば、内容を踏まえて審査結果を登録できるので、業務の効率化につなげられる。輸出管理を担う管理部門の場合、各部門の審査結果とAIエージェントのレポートを照合することで、妥当性確認やチェック作業の効率化が可能だ。
一方、該非判定業務向けでは、各部門が収集した情報と頻繁に更新されるリスト規制の最新情報を照合し、判定に必要な項目に不足がないかを確認する。また、参考となる判定結果や、その根拠となる法令条文、技術仕様を整理したレポートも自動で作成する。担当者は、これらの情報を参照しながら、的確に該非判定を行えるようになり、属人化しやすい該非判定業務の効率化と判断品質の平準化が可能となる。
安全保障貿易管理ソリューションでは今後もAIを活用したサービスの拡大を計画している。取引審査にも活用を広げていく業務領域の拡張、審査時の添付ファイル/画像にもAIを適用可能にするマルチモーダル対応、顧客審査レポートの英語表示対応といったグローバル対応などが方向性として挙げられている。
なお、今回の安全保障貿易管理ソリューションにおけるAIエージェントの導入は、日立ソリューションズ社内におけるAI活用コンテストで社長賞を受賞した米国グループ会社の取り組みを自社製品に適用した事例となる。日立ソリューションズとしては、カスタマーゼロでユースケースを創出する社内活動の応用による顧客向け事業活動の拡大を積極的に進めていく方針である。
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