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イチから全部作ってみよう(31)SQLを操作して実際にデータベースを作ってみる山浦恒央の“くみこみ”な話(200)(4/4 ページ)

ソフトウェア開発の全工程を学ぶ新シリーズ「イチから全部作ってみよう」。第31回は、SQLの操作方法の解説をもう一歩進めた上で、実際にワインの商品データベースを作ってみる。

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7.付録:ワインの小ネタ(ワインを特定する方法)

 ワインに関するちょっとした小ネタを紹介します。今回の商品データには、「ブルゴーニュ ピノノワール」と「ブルゴーニュ シャルドネ」の同名の商品が2つずつありましたね。この時、「商品の名称だから、商品テーブルには、商品名だけ登録しておけばいいや」としてしまうと、同名の商品には対応できません。では、どうすればいいでしょうか。

 ワインの識別は、ざっくり言うと、「ワイン法で決まった地区名(地方、村、畑)+ブドウの品種+ビンテージ+生産者名」の組み合わせで特定します※1)。例えば、次の例で考えてみましょう。

※1)表記法は国や商品によって違います。

ブルゴーニュ ピノノワール 2022 ドメーヌヤマウラ

 これは、次のことを表しています。

  • ブルゴーニュ:フランスのブルゴーニュ地方で作られている(ブルゴーニュやボルドーと書いてあるからと言って全てが高級なものだとは限りません)
  • ピノノワール:ピノノワールという種類のブドウを使っている(産地によっては品種を表記しない場合がある)
  • 2022:ブドウの収穫年が2022年となっている(同じ名称でビンテージ違いがたくさん存在する)
  • ドメーヌヤマウラ:ヤマウラという生産者が生産している(ドメーヌはワイン生産者のこと)

 この構造は、身近なネギを例にすると、イメージが深まります。

群馬県産(地区) ホワイトスター(品種名) 山浦農園(生産者)

 この情報を消費者が見ると、群馬県の山浦農園で収穫したホワイトスターだと分かりますね。ワインの法律は国によって異なりますが、基本は、「表記した生産地区が狭いほど高級になり、栽培方法が厳しくなる」です。「日本産」ですと、いろいろな都道府県のネギが混じっていますが、「群馬県産」は群馬県限定、「群馬県甘楽郡産」はさらに狭く、「(群馬県甘楽郡)下仁田町産」はもっと狭い地区なので、法律上は高級なネギになります(ワインの場合、最も狭い単位は「畑」で、例えば世界最高価格の「ロマネ・コンティ」は畑名です)。ソムリエの資格試験では、フランスだけでなく、世界のワイン生産地の「法律上の地区名」を覚えねばならず、半年は勉強する必要があるそうです(各生産地区で、栽培してよいブドウの品種が決まっている場合がほとんどです)。

 生産者の実力も価格に大きく影響します。同じ「下仁田町産」のネギでも、山浦農園のネギがおいしいとの評判が立てば、1箱1万円で取引されるでしょうが、無名ならただ同然の安い金額になるかもしれません。

 ネギは、買ってから数週間以内に食べる場合がほとんどですが、ワイン、特に赤ワインは、何年も寝かせて熟成させる楽しみがあります。ワインはブドウで作る一種の農作物ですので、ブドウの出来/不出来により価格が大きく変動します。天候に恵まれた年は凝縮感が高く、長期熟成しますので資産的な価値があり、毎年、値上がりしますが、雨が多く日照が少なかった不良年は、ブドウが十分に育ちません。生産量が少なく、長持ちしないため、早く飲んでしまいます(逆に言えば、若いうちから楽しめるワインと言えます)。高級ワインでは、生産年の良しあしで価格は10倍以上、違ってきます。

 以上から、ワインの商品データには、少なくとも「商品名、地区名、ビンテージ、生産者」が必要で、今回のデータベースの例では、商品名を地区名に含めて定義しています。

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【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)

人間環境大学 環境情報学科 教授(工学博士)


1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科准教授、2016年より非常勤講師。2025年4月より、人間環境大学環境情報学科教授。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


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