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イチから全部作ってみよう(27)「ACID」で示されるデータベースの4つの特性山浦恒央の“くみこみ”な話(196)(1/3 ページ)

ソフトウェア開発の全工程を学ぶ新シリーズ「イチから全部作ってみよう」。第27回は、データ設計の基盤となる「データベース」の4つの基本特性について取り上げる。

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1.はじめに

 山浦恒央の“くみこみ”な話の連載第170回から、入門者をターゲットとして、「イチから全部作ってみよう」というシリーズを始めました。このシリーズでは、多岐にわたるソフトウェア開発の最初から最後まで、すなわち、要求仕様の定義、設計書の作成、コーディング、デバッグ、テスト、保守までの「開発フェーズ」の全プロセスを具体的に理解、経験することを目的にしています。

 興味がある方は、連載第170回からのバックナンバーをご覧ください。

⇒連載「山浦恒央の“くみこみ”な話」バックナンバー

2.前回の振り返り

 前回は、データ設計のイントロダクションとして、プログラムが「処理」と「データ」で成り立っていることを説明しました。

 処理(ロジック)とデータの双方を正しく理解し設計することで、品質の高いソフトウェアを実現できます。

 今回からは、データ設計の基盤となる「データベース」について取り上げます。

3.昔は紙がデータベース代わりだった

紙の記録
※画像はイメージです

 コンピュータが普及する以前、情報の記録と管理は「紙」が中心でした。例えば、給与管理、顧客名簿、座席予約、在庫管理など、業務で扱うあらゆるデータは、帳簿やノートに記載していました。当然ながら、記載ミスや紛失のリスクが常にあり、情報管理の効率化には限界があります。

 現在は、コンピュータと記憶媒体の普及により、データを磁気ディスクなどに保存できるようになりましたね。加えて、データベース管理システム(DBMS)の登場により、大量データを効率的に管理するための仕組みができました。これにより、企業や行政機関は膨大な情報を一元管理し、活用できます。

 昨今の多くのシステムは、データベースの存在を前提に作成します。ECサイトを例にすると、商品データをデータベースとして保持することで、ユーザーはいつでも商品情報を閲覧できますし、購入データや在庫状況も逐次把握できるでしょう。

 このように、データ設計を行う上で、データベースの仕組みを一定程度理解することは大事です。よって、今回は、「データベースを使うと何がうれしいか」を説明します。

4.データベースを使うと何がうれしいか

 今回は、「近所のフリーマーケットでワインを販売する」という設定で進めます。

4.1 今回の設定

 近所のフリーマーケットでワインを販売することにしました。店番は、商品が売れるたびに、商品管理ノート(表1)の在庫を更新し、売り上げノート(表2)に売り上げ金額を記載します。

商品名 価格 在庫数
シャトー・マルゴー 7000円 20
ポメリー・ロゼ 1500円 30
ミラヴァル 2000円 40
表1 商品管理ノート

商品名 本数 購入金額
シャトー・マルゴー 1 9000円
ミラヴァル 1 2500円
…… …… ……
表2 売り上げノート

 「フリーマーケットでワインなんて売らないよ」「目で見れば在庫なんて分かるじゃん」という点は置いておいて、このテーマから「データベースを使うメリット」として、有名な「ACID」を説明します。ACIDは、経済産業省認定の国家資格である情報処理技術者試験でも必ず出題されるデータベースの基本で、「A:Atomicity(原子性)」「C:Consistency(一貫性)」「I:Isolation(独立性)」「D:Durability(永続性)」の略語です。データベースは、この4つの基本特性をそろえています。

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