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1990年代後半のものづくり(その1)〜設計研究の芽生え〜ものづくりをもっと良いものへ(5)(3/3 ページ)

本連載では、エンジニアとして歩んできた筆者の50年の経験を起点に、ものづくりがどのように変遷してきたのかを整理し、その背景に潜むさまざまな要因を解き明かす。同時に、ものづくりの環境やひとづくりの仕組みを考察し、“ものづくりをもっと良いものへ”とするための提言へとつなげていくことを目指す。第5回は「1990年代後半のものづくり」をテーマに、設計研究の芽生えについて振り返る。

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「DfX」という考え方

 図3の考え方を、「DfX(Design for X)」として具体的に実行できる形で示したのがスタンフォード大学の石井浩介氏だ。DfXとは、製品開発において、企画から設計に移行する際に、製品ライフサイクル全体を通して最適な設計を行うための手法である。石井氏によれば、製品ライフサイクルは一般的に図4のようになる。

DfXという考え方
図4 DfXという考え方(参考文献[1])[クリックで拡大]

 ここでいう設計とはその初期に当たる部分であり、図4では企画構想、概念設計、詳細設計がそれに相当する。製品は設計の後、試作調達、製造組立を経て体をなし、出荷、据え付け調整、サービス保守と顧客側へとその場所が移行する。寿命を全うした製品は回収/再生され、次の製品開発へ生かされる。

 図4からも分かるように、設計段階では製品ライフサイクル全体を考慮した設計を行うことが望ましい。

 ノートPCを例に考える。企画構想段階では、対象とする顧客層を絞り込み、商品コンセプトを検討し決定する。次に、このコンセプトが概念設計を通して具体化していく。最後に、製造性も考慮して詳細設計を行う。

 通常、この3つの段階が設計であるが、この一連の設計においては、部品の調達、製造組立性、梱包(こんぽう)、搬送、サービス、回収/再生など、製品ライフサイクル全体を通した視点も考慮しておく必要がある。ノートPCの場合には、過去の製品開発の情報も有効な設計情報となり得る。

 図5に製品ライフサイクル、設計過程と設計手法との関係を示す。各設計段階で、製品ライフサイクルの各項目をどのような手法で評価するかが示されている。実際には、設計の過程や対象とするライフサイクル項目に応じて最適な手法を適用する。図5に示した手法は代表的なものであり、目的に応じて複数の手法を組み合わせて使用することもあり、また新たに開発されることも多い。このことから、CAD/CAEは設計手法の一部であることが分かる。

製品ライフサイクル、設計過程と設計手法との関係
図5 製品ライフサイクル、設計過程と設計手法との関係(参考文献[2])[クリックで拡大]

 石井氏は大学卒業後、数年日本の企業で働き、その後米国の大学に移りDfXを理論化し、さまざまな企業と共同研究することにより、実際のものづくりにかなう設計工学へと発展させた。日本のものづくりも経験しているため、理論中心の欧米の設計研究とは一線を画している。DfXについても次回以降、事例を交えて紹介する。 (次回へ続く)

参考文献:

  • [1]設計のための1DCAE概念と実現技術|日本機械学会(2020)
  • [2]Toyota’s Principles of Set-Based Concurrent Engineering, MIT Sloan Management Review, Winter; 40,2
  • [3]大富著|よくわかる設計手法活用入門|日刊工業新聞社(2016)

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール:

大富浩一https://1dcae.jp/profile/
Ohtomi Design Lab. 代表

⇒代表者アドレス:ohtomi3@outlook.jp


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