9割が削りくず、菱輝金型工業が挑む「人工太陽」の超精密パーツ製造:材料技術(1/3 ページ)
1.5トンの金属塊から9割を削り落とし、極限精度でパーツに仕上げる――。愛知県の金型メーカーが、核融合発電の最終実証装置に必要な高難度のパーツの試作に成功した。
核融合発電による「実用発電」を目指し、ヘリカル型核融合炉の開発を進めるHelical Fusionは2026年3月17日、航空や宇宙の分野に向けた大型の金属精密加工において技術力と実績を有する菱輝金型工業との事業連携により、最終実証装置「Helix HARUKA」向けのコンポーネント製作の一部を完了したと発表した。
同日に愛知県一宮市の菱輝金型工業本社工場とオンラインで記者会見を開催し、Helix HARUKA で使用するコンポーネントとして、「ヘリカルコイルケース」のパーツ全10点と増殖ブランケットパーツ1点の試作品が完成したと明かした。
ヘリカル型核融合炉は、ヘリカルコイル(高温超伝導コイル)、プラズマ、ポロイダルコイルなどから成り、1億℃の水素ガス(プラズマ)を閉じ込めるために複数のらせん状のヘリカルコイルを使うタイプを指す。トカマク型と比べてプラズマ性能は劣るものの、プラズマ保持時間が長く恒久的な稼働に適している。ヘリカルコイル自身をらせん状にすることで、電流が作る磁場を重畳(ちょうじょう)させて磁場を捻(ひね)る。このように、磁場の籠でプラズマを閉じ込める方法を「磁場閉じ込め方式」と呼ぶ。
2025年にHelical Fusionと業務提携を正式に締結
菱輝金型工業は、主要事業として航空宇宙治工具事業、産業機器部品事業、装備品部品事業、受託測定/Tooling MRO事業を展開している。事業拠点は愛知県一宮市の本社工場、同県稲沢市の稲沢工場、栃木県宇都宮市の関東営業所である。
同社は1967年に設立され、1997年に宇宙産業へ参入し、2000年に複合成形型の供給を開始した。2014年に最大加工寸法14×3.5mの大型同時5軸加工機を導入し、2025年にHelical Fusionと事業提携を開始。菱輝金型工業 代表取締役の原康裕氏は次のように語る。
「当社は設立から一貫して非常に大きなものをできるだけ精密に加工する技術の開発を目指している。1967年に自動車のプレス金型の設計/製作をメインに設立された。1997年に自動車メーカーが自動車部品の共通化や最適な調達について検討を推進し、さまざまな自動車部品でコストダウンが求められるようになった。このままではプレス金型で生産される自動車部品にもコストダウンが必要となり、事業継続が厳しくなると考え、航空産業に参入することを決断した」。
加えて、「1997年に炭素繊維複合材(CFRP)を用いた航空宇宙向けの治工具の開発に着手した。2014年に民間航空機で多くのCFRP製治工具が採用されることになり、これに伴って当社の航空宇宙治工具事業も大幅に成長した。この成長もあり、2014年に14×3.5mの大型同時5軸加工機を導入している。2020年にコロナショックで航空業界が大きな影響を受け、当社も同じように大きな影響を受けた。そこで、『やっぱり航空だけではダメだろう』と考え、産業機器部品事業を立ち上げ、その中でHelical Fusion 代表取締役 CEOの田口昂哉氏と出会った。そして、2025年にHelical Fusionと業務提携を正式に締結し、(核融合発電という)新しい分野に向けた取り組みをスタートした」と振り返る。
なお、同社の航空宇宙治工具事業はCFRPの成形型で国内市場において約70%のシェアを得ており、航空機や宇宙ロケットの胴体など大型部品の成形型を国内で製造できる唯一のメーカーだという。産業機器部品事業は、工作機械、輸送機器、インフラ向け製品など、量産部品を中心に幅広い産業分野に対応している。
原氏は「産業機器事業部の強みは、最大吊り上げ能力50tの『重量物対応』、さまざまな産業分野で培ったモノづくり力である『工程立案能力』、設計から品質保証まで一貫対応可能な『エンジニアリング能力』、国内最大級の機械加工設備を活用した『機械加工力』だ」と話す。
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