9割が削りくず、菱輝金型工業が挑む「人工太陽」の超精密パーツ製造:材料技術(2/3 ページ)
1.5トンの金属塊から9割を削り落とし、極限精度でパーツに仕上げる――。愛知県の金型メーカーが、核融合発電の最終実証装置に必要な高難度のパーツの試作に成功した。
増殖ブランケットとは?
ヘリカルコイルケースは、磁場を創出するための高温超伝導マグネットを収納し、形状精度も保証する3次元らせん形状の重要部品だ。Helical Fusionの高温超伝導コイルは、液体窒素の沸点よりも高い温度で超伝導状態を示す高温超伝導マグネットを複数用いて絶縁体を使用せずに製作した強力な電磁石であり、超伝導状態で通電すると先述の磁場閉じ込め方式に必要な磁場を発生させることができる。
ヘリカルコイルケースのパーツ全10点に関しては、難削材かつ複雑な3次元形状のため加工ひずみの予測は困難だったという。そこで、最適な工程設計と専用治具により10点のパーツで安定して要求精度を達成している。
Helical Fusion 代表取締役 CEOの田口昂哉氏は「今回の部品を10個つなぎ合わせると、直径3〜4mほどのドーナツ状になる。外側の溝に超伝導ケーブルを束ねて巻き付け、強力な磁場を発生させる。プラズマを正しい形で閉じ込めるため、数mmのズレも許されない極めて高い精度が要求される」と述べた。
菱輝金型工業の担当者は「ヘリカルコイルケースは、プラズマを閉じ込めるための強力な磁場を発生させる超伝導マグネットを収納する。そのため、極低温/高磁場に耐え得る強度と精度が求められる。ヘリカルコイルケースの材料には難削材として知られる『SUS316(ステンレス鋼)』を採用した。1.5トンの材料から削り出し、最終的に85〜90kgになるまで加工した。実に90%以上が切りくずとなる作業を要したが、ステンレス特有の加工による『ひずみ』を抑え込みながら、複雑な3次元形状を±1mm以内で仕上げることに成功した」と説明した。
増殖ブランケットは、内部および表面を流れる液体金属を用いて、核融合反応で発生したエネルギーを熱に変えて取り出すカートリッジ式の重要部品だ。「増殖ブランケットは、炉心を取り囲み、中性子の運動エネルギーを熱エネルギーに変換すると同時に、燃料となる三重水素を増殖させる重要なパーツである。内部に液体金属を循環させるため中空構造となっており、『一体削り出し』が物理的に不可能だった。3Dプリンタや鋳造では必要な精度やコスト要件を満たせなかった」と菱輝金型工業の担当者はいう。
この問題の解決策として、分割加工と溶接を組み合わせた「分割加工+溶接工法」を採用した。
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