ウエハー大型化に三菱電機が“コンパクトな”垂直多関節ロボットを提案する理由:FAインタビュー
半導体製造工程では、ウエハーの大型化に伴い、従来より可搬重量の高いロボットが求められている。しかし、工程間の搬送スペースは狭く、ロボットの大型化には限度がある。その課題に対して、三菱電機が投入したのが、最大可搬質量20kgの垂直多関節ロボット「RV-20FRL」だ。開発背景などを聞いた。
半導体製造工程ではウエハーや、ウエハーを格納したFOUP(Front Opening Unified Pod)を搬送するため、数多くのロボットが使われている。専用の水平多関節ロボットなどが多く活用される中、汎用の垂直多関節ロボットを提案しているのが三菱電機だ。既に30年近くクリーンロボットを提供しており、2025年末時点で累計1万台を超える出荷実績を持つ。新製品「RV-20FRL」の開発背景や半導体製造工程が抱える課題などについて、開発に携わった三菱電機 名古屋製作所 ロボット製造部 開発課 製品維持チーム チームリーダーの松村圭祐氏に話を聞いた。
ウエハー300mm化でハンドも大型化、重量アップ
三菱電機が2025年12月に販売を開始した「RV-20FRL」は、最大可搬質量20kg(定格15kg)、最大リーチ半径1388mmの垂直多関節ロボットだ。クリーンルーム仕様はISOクラス3に準拠しており、パーティクルカウンターを用いたダスト量チェックを全数行っている。松村氏は「通常の出荷試験をクリアした製品に対してクリーン度の試験を行い、クリーン度を保ったまま梱包して出荷する」と話す。標準仕様で防塵(じん)防水性能がIP40、オイルミスト仕様はIP67に対応している。
RV-20FRLは垂直多関節のため、水平方向だけでなく、上下方向も含めた立体的な動作が可能になる。厳密な水平出しも不要だ。半導体製造工程における限られたスペースでの活用を想定して開発されており、同じクラスの他社製垂直多関節ロボットより軽く、全高もコンパクトな設計となっている。「半導体製造工程では、各工程のスペースは広く取られていても、工程間の搬送に関しては狭い空間になっていることが多く、コンパクトさが強みになる」(松村氏)。
最大リーチ半径は、同社の可搬質量13kgの「RV-13FRL」と同じとなっており、半導体製造工程でRV-13FRLを使っていた既存ユーザーの置き換えも容易にしている。
近年、生産性を高めるため、ウエハーのサイズは直径200mmから300mmへと大型化している。ウエハーは極めて薄いため200mmと比べて300mmウエハーの1枚当たりの質量増加はわずかだが、FOUPに格納する25枚を一度に把持しようとすると質量の増加は25枚分となる。また、ウエハーが大型化する中で、歩留まりを向上させるため、ウエハー搬送時の破損なども防がなければならない。
松村氏は「半導体製造装置メーカーは、ウエハーを破損させないように信頼性を重視する。搬送時の安定性を確保するため剛性を確保しようとすると、まずロボットのハンドが大型になる。そのため、可搬質量20kg級で高精度な作業ができるロボットが求められている」と語る。
通常、ロボットメーカー各社は可搬質量7kg、13kg、20kg、25kg……というラインアップを持つ。可搬質量が増すために、より大きなモーターや減速機を使うと、関節部が大きくなる。また、剛性を得るためロボットのアームも長く、太くなる。
「例えば、可搬質量が13kgと25kgのロボットを並べると、その中間の20kgのロボットはアーム長などが25kgのロボットに近い構造になる。そういった中で、今回のRV-20FRLは、可搬質量20kgながら、13kgに近い設計コンセプトで開発した」(松村氏)
ただ、可搬質量13kgに近いロボットの構造で、同20kgの性能を実現するのは容易ではない。松村氏は「コンパクトさ、クリーン度および精度の高さという3つの要素のバランスを取ることが難しかった」と話す。
まず可搬質量に関しては、RV-13FRLベースのモーターや減速機を使いながらも、減速機の減速比を大きくすることで、コンパクトさを保ちつつ可搬質量アップに対応した。「減速機の減速比を大きくすると動作スピードが落ちる面はあるが、今回はいかに狭い空間で小回りが利き、精度良く搬送できるかを優先させた」(松村氏)。
また、ロボットのクリーン度を高めるためには、ロボット内部で発生した粉じんを外部に漏らさないように、ロボットをしっかりと封止する必要がある。だが、封止するための部品などを内部に取り付けないといけない。
「設計として簡単なのは、ロボットの関節部を大きくして内部の空間を広げることだが、そうするとコンパクトさを保てない。クリーン度とコンパクトさを両立させる構造的な工夫が必要だった」(松村氏)
ロボットがコンパクトになっても、剛性が低下し、精度に影響してしまえば意味がない。「シミュレーションを繰り返して、剛性を保ちながらコンパクトになるよう設計した」(松村氏)という。
半導体製造装置の市場が活発な欧州や中国での展開を見据えて規格を取得しており、松村氏は「国内のユーザーには一定の評価をいただいている。今後はグローバル展開も図りたい」と展望する。
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