検索
ニュース

出荷量1.3倍を実現、電源不要のIoTゲートウェイが南種子町にもたらす農業改革スマートアグリ(2/2 ページ)

東京エレクトロン デバイスとグリーンは、農業IoT「e-kakashi」を用いた鹿児島県南種子町での支援成果を発表した。ソーラーパネル搭載で電源不要のIoTゲートウェイで環境データを収集/分析し、パプリカ出荷量1.3倍の増収を実現した。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       
ゲートウェイの仕様
ゲートウェイの仕様[クリックで拡大] 出所:グリーン

 完成したゲートウェイは、150×152×52mm、重量800g以下という小型設計であり、防水防塵(じん)規格のIP55に準拠し、−15〜55℃までの温度環境下での動作が可能である。本体にソーラーパネルとニッケル水素電池を内蔵しており、外部電源を引き込むことなく単独稼働を実現している。通信は4G/LTEを利用してクラウドへ直接データを送信する。

 デバイスの下部には、アナログ用2つ、デジタル用2つ、ACアダプター用の計5つのコネクターが備わっており、ケーブルで各種センサーを物理的につなぐ仕組みだ。温湿度、土壌温度、体積含水率、水深、日射、サーミスター、CO2などが検知可能である。また、グリーンが保有する天気予報情報をAI(人工知能)に学習させることで、5日先までの土壌水分の予測なども実現した。

 ハードウェアから収集した環境データに加え、生育記録や作業履歴といったデータをクラウドへ集約し、ソフトウェア上で一元的に可視化できるようにした。ユーザーは、Webアプリケーションやスマートフォン、タブレット端末の専用アプリを通じて栽培状況を確認できるほか、異常時のアラート通知を受け取ることができる。また、農業版BI(ビジネスインテリジェンス)ツールとしての機能も有しており、蓄積したデータを分析して栽培判断に生かすことが可能になる。

データ活用で出荷量が1.3倍に、南種子町での成果

 今回発表した鹿児島県南種子町への導入は、同町内でシーズファームが運営する農園への先行導入が契機となった。農業未経験者の従業員が多くを占めるシーズファームでは、農業ノウハウの不足や、種子島特有の変わりやすい天候への対応が課題であった。

シーズファームの坂口浩太郎氏
シーズファームの坂口浩太郎氏

 シーズファーム 代表取締役社長の坂口浩太郎氏は、「e-kakashiをフルーツパプリカ栽培に導入した1年目は、ストレスアラートが多発する反省を残したものの、標準糖度11度をクリアし、年間出荷量4トンを記録した。続く2年目は前年の反省を生かし、温度管理とCO2濃度に着目してストレスを未然に防ぐ栽培に取り組んだ。その結果、標準糖度11度を維持しつつ、年間出荷量は作付面積当たりの前年比で1.3倍となる8トンを達成した」と成果を語る。

シーズファームでの導入成果
シーズファームでの導入成果[クリックで拡大] 出所:シーズファーム

 南種子町では2025年7月より、町内24戸の農家(パプリカ、オクラ、レザリーフファン、マンゴーなど)にe-kakashiを導入。同年9月からは、カボチャを栽培する6戸が加わり、現在は合計30台の機器が町内で稼働している。

南種子町では現在30台のe-kakashiが稼働している
南種子町では現在30台のe-kakashiが稼働している[クリックで拡大] 出所:東京エレクトロン デバイス、グリーン

 また、北海道のカルビーポテトにおけるジャガイモ栽培では、昨今の干ばつに対応するため土壌体積含水率などの数値データを分析した。芽が出てから花が咲くまでの重要な生育ステージにおいて、データに基づくアラート機能を活用し適切なタイミングで水やりを行った結果、干ばつの影響を回避し、収穫量が最大1.6倍に増加した。

漁業や製造現場での活用も検討

 今後の展望として、グリーンはe-kakashiの機能拡張やサービスの高度化を図っていく方針である。戸上氏は、「農業にとどまらず、漁業といった他の一次産業や、工場や製造現場などでも活用できる可能性がある。今後は他分野への展開も含めて検討したい」と展望を語った。

 TEDは、IoTゲートウェイの提供と検証支援を通じて、e-kakashiのサービス基盤を技術面から継続的に支えていく。地方ごとに異なる多様な農業課題の解決に向けて、システムの要となるゲートウェイの普及をハードウェアの側面から力強く推進していく構えである。木村氏は「地方ごとに異なる多様な農業課題の解決に向けて、システムの要となるゲートウェイの普及をハードウェアの側面から推進したい」と意気込みを語った。

⇒その他の「スマートアグリ」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る