新型コロナ向け「ワクチン接種パッチ」の実用化へ前進、自己接種も可能に:医療技術ニュース
東京大学らは、新型コロナウイルス感染症のワクチンをマイクロニードルに組み込んだ「ワクチン接種デバイス」を開発した。製造プロセスを改良することで、ワクチン充填率の向上、ウイルス力価の安定化に成功した。
東京大学は2026年2月5日、東京都医学総合研究所と共同で、新型コロナウイルス感染症のワクチンを溶解性のマイクロニードルに組み込んだ「ワクチン接種デバイス」を開発したと発表した。新型コロナウイルス感染症の抗原遺伝子を組み換えたワクシニアウイルスを搭載したもので、充填率の大幅な向上と、製造過程におけるウイルス力価の安定化に成功した。ワクチンの効率的な送達と常温輸送、自己接種への応用を目指す。
開発したワクチン接種デバイスは、3Dプリンタで作製した柱状ガイド付きの構造を採用している。バッキング(基板)に柱構造を組み込むことで、ニードル先端のみにワクチン溶液を充填する手法を考案した。これにより、先端充填効率は16.5%と、従来のモールディング法に比べ約8.3倍向上した。また、製造後の力価保持率も50.4%を確保し、従来のマイクロニードル作製法の40.4%から改善した。
マウスを用いた免疫原性試験では、同デバイスによる接種は従来の皮内投与法と比較して1.2倍高い抗体応答を示した。新型コロナウイルスの感染モデルを用いた実験において、パッチを接種したマウスは全て生存することも確認している。
マイクロニードルを使用するワクチン接種は、従来の二又針を用いる方法に比べて低侵襲で痛みが少なく、出血も伴わない。しかし、これまでの溶解型マイクロニードルでは、ニードル先端への薬物充填が難しく、乾燥工程でウイルス力価が低下する課題があった。
同技術は、医療従事者が不足している地域や、低温流通網の維持が困難な発展途上国における予防接種への貢献が期待される。研究グループは今後、ヒトへの応用に向けた安全性と倫理性の検討を進める方針だ。
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