AI駆動開発を支援するIBM Bobとは何か:人工知能ニュース(2/2 ページ)
日本IBMは、エンタープライズ向けのAI駆動開発を支援する「IBM Bob」を中心に仕様駆動開発を推進すると発表し、同社が掲げるAI戦略について説明した。
AIエージェントの設計時の障害「トリレンマ構造」の解消を目指すIBM
AIエージェントの設計には、正確性/柔軟性/速度の3つの要素を意識したバランス設計が不可欠だが、実際には技術的に難しい側面が多く、いずれかの要素を高めようとすると他の要素が犠牲になる「トリレンマ構造」が存在している。
例えば、コールセンターで対話型のAIエージェントが求められる応答速度がテキストで10秒、会話で4秒という要件の場合に、現実では通常の流れを逸脱した事例の発生や内容の差し戻し、新たな要件が割り込むなど、さまざまな想定外の出来事が発生する。そのため、イレギュラー対応がある度にAIが再推論をする必要があり、結果的に正確性や必要な速度が失われるという問題が発生してしまう。
この問題を解決するために、日本IBMの金融業界向けのソリューションにIBMのAIエージェントソフトウェアとAIエージェントに関する専門知識と技術力を活用したソリューションアセットを開発している。これにより、割り込みや差し込みといった状況にも柔軟に対応できる。村田氏は「割り込みや差し戻しといった状況に、推論速度と正確性を犠牲にすることなく処理を実現するためには、アプリケーションの専門知識だけではなく、その領域での専門知識も必要になる。このような全体の技術を持っていることはIBMの優位性だと認識している。今後も多くの事例を増やしていく」と強調する。
部門ごとにバラバラで導入したAI技術をまとめる「統合AI基盤」を整備
2025年からは部門ごとに生成AIシステムやAIエージェントがバラバラで導入されるという「AIエージェントの野良化」についての懸念が強くなっており、顧客からも問い合わせが増えているという。村田氏は「最大のリスクはデータ侵害である。このような状況だと侵害が発生した際に適切な監査ができない、どのLLMにアクセスしたかが分からないという状態に陥ってしまう」と分析する。
日本IBMはこの課題を解決するために、統合AI基盤を製作し、数多くのアーキテクチャを用意してきた。現在では金融業や公益業、製造業といった分野で先行プロジェクトを進めているという。
また、今後のAI利用拡大によって問われることになる「デジタル主権」についての対応も進めていかなければならない。デジタル主権とは、これまでのソブリンクラウドはどこにデータが保存されているのかを明確にする「データレジデンシー」という考え方が一般的だった。これに加えて、現在ではどこで運用しているのか、どのような制限があるのか、ログや監査はあるのか、技術がオープンで選択できるかなどさまざまなものが求められるようになっている。
実際に欧州ではクラウドサービスがどの程度「主権要件」を満たしているのかの成熟度を示す「Sovereignty Effectiveness Assurance Level(SEAR、主権実効性保証レベル)」を定義し、公共業や金融業といった経済安全保障上の重要な業種においてデジタル主権に関する評価結果の提出が求められている。
このような背景からIBMは新たなソリューションとして、主権をソフトウェアそのものに組み込み、企業がデジタル主権を確実に検証して、安全な運用管理ができるように支援する「IBM Sovereign Core」を開発した。同ソフトウェアは2026年2月から先行アクセスを提供し、同年6月には一般提供の開始を予定している。
同ソフトウェアは技術のオープン性を持つという特徴上、これまで同社が買収してきた「Red Hat」や「HashiCorp」といったソフトウェアもIBM Sovereign Coreに含まれている。村田氏は「現在、ITサービスプロバイダーの方々と技術的な討議を進めている。欧州では2社、日本でも幾つかのITサービスプロバイダーと議論を開始している。IBMはAIが動く基盤をパブリッククラウドとハイブリッドクラウドでそれぞれ50%ずつに定着しており、その背景の1つがソブリンクラウドである」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Rapidusの2nm半導体製造拠点にIBMがMESを導入、自動化と早期立ち上げを支援
日本IBMは、Rapidusの最先端半導体製造拠点「IIM-1」に半導体製造向けMES「IBM IndustryView for Semiconductor Standard」を導入した。
逆設計に対応するIBMの「材料開発DXサービス」、JSRも採用
日本の製造業GDPの3割を支える「材料産業」が今、岐路に立たされている。世界的なPFAS規制の厳格化、中韓勢の台頭、そして熟練技術者の減少――。この複合的な課題の解決策として、日本IBMは「材料開発のDXサービス」の提供を開始した。
量子優位性の達成に向け、30%性能を向上した最新プロセッサと技術成果を発表
IBMは、将来の量子優位性達成とフォールトトレラント量子コンピュータ提供に向けた取り組みを発表した。また、新プロセッサ「IBM Quantum Nighthawk」「IBM Quantum Loon」などを公開した。
日本IBMが「watsonx」でサプライチェーンを効率化するAIソリューション提供
日本IBMは、企業のサプライチェーンを効率化し、生産性を高めるAIソリューション「Supply Chain Ensemble」を発表した。2025年10月から日本国内で提供を開始する。
東大IBMの量子コンピュータが156量子ビットに、Miyabiとのハイブリッド演算も
東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピュータ「IBM Quantum System One」の2回目のアップデートを行うことを発表。また、東京大学と筑波大学が共同運営するスパコン「Miyabi」と接続した「量子AIハイブリッドコンピューティング」にも取り組む。
日本IBM、企業のAI本格活用を支援するフレームワークを発表
日本IBMは、AIの本格活用を支援するフレームワーク「デジタル変革のためのAIソリューション」を発表した。ビジネス変革を含む、全社的なAIの実用化をサポートする。





