蒸留塔の理論段数と還流比の計算:はじめての化学工学(15)(2/2 ページ)
前回の蒸留に関する基本を踏まえて、単純なモデルを用いた蒸留計算に進みます。この計算が、必要な蒸留塔の性能や運転条件を求めるためのベースとなります。
還流比の重要性
還流比を増やすことで理論段数を減らせます。マッケーブ・シール法による作図を行うと、還流比Rの設定によって必要な理論段数が大きく変化することが分かります。
還流比を小さくしていくと、操作線が気液平衡曲線に近づいていきます。操作線と平衡曲線が接触してしまうと、階段を作図するための隙間がなくなり、段数が無限大となってしまいます。この時の還流比を「最小還流比Rmin」と呼びます。無限の段数を持つ塔を建設することは不可能です。実際の運転ではこれよりも大きな還流比を設定しなければなりません。
反対に、還流比を非常に大きくし、凝縮液の全量を塔に戻す操作を「全還流」と呼びます。この時、製品としての抜き出し量Dはゼロになりますが、操作線は対角線(y=x)と一致します。つまり必要な理論段数は最小となります(最小理論段数)。
設計においては、これらの中間でバランスを取る必要があります。還流比が高い場合、段数は少なくて済み、塔の高さ(設備費)を抑えられますが、塔内を循環する液量が増えるため、リボイラーの加熱量やコンデンサーの冷却量(運転費)が増大します。反対に還流比が低い場合、エネルギーコスト(運転費)は下がりますが、分離に必要な段数が増え、塔が高く(設備費が高く)なります。一般的に、経済的な最適還流比は、最小還流比の1.2〜2.0倍程度といわれています。
終わりに
蒸留塔の段数計算は、コストに直結する非常に重要な事項です。今回解説した棚段塔ではなく充填(じゅうてん)塔の場合、HETP(Height Equivalent to a Theoretical Plate:理論段相当高さ)という指標を用いて性能を表現します。充填塔を選択する場合は参考にしてください。
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