既存生産設備の消費電力計測、三菱電機が目を付けた“ブレーカの端子カバー”:FAインタビュー(2/2 ページ)
設備単位での電力見える化が求められる一方で、課題となっていたのは既存設備への計測機器の施工負担だ。その課題に対して、三菱電機が着目したのはもともとブレーカに付いている端子カバーだった。同社の端子カバー形計測器の開発の舞台裏に迫った。
新たなコアレス電流センサーで端子カバー形実現
MONOist 端子カバー形ということですが、どのように電力を計測しているのでしょうか。
瀧川氏 今回、われわれはコアレス電流センサー方式というものを新たに開発した。端子カバーの電線を囲うU字型の箇所に複数個の磁気センサーを取り付け、電線から発生した磁界を捉えて計測するというものだ。
従来の円形の電流センサー(CT)は、後付け時にブレーカに配線された電線を一度外す手間が生じてしまう。クランプ型のCTもあるが、短いピッチで電線に取り付けるのが難しく、ずらした場所に取り付けるのも大変だ。それらの手間をなくすために、端子カバーに置き換えられる、U字型のコアレス電流センサーを開発した。
松枝氏 従来、消費電力を計測する機器は、本当の値とほとんど誤差が出ないようになっている。端子カバー形計測器でも、電線の位置が真ん中にあれば誤差はほとんど生じないが、真ん中からずれてしまうと磁界を検知する磁気センサーの感度が変わり、従来のセンサーより誤差は大きくなってしまう。
ただ、今回、ヒアリングを進めていく中で、ユーザーからは設備入れ替え時や日々の“変化”を見たいという声が多かった。そうなると、値そのものは重要ではなく、“差分”が見られればいいということになる。そういったニーズに応えながら、使い勝手の良さを実現するため、開発に踏み切った。
順次のアップデートでよりユーザーフレンドリーに
MONOist 「JECA FAIR 2025 第74回電設工業展」の製品コンクールでは「国土交通大臣賞」を受賞しましたが、その反響はいかがでしたか。
松枝氏 国土交通大臣賞は、同製品コンクールでは最上位の賞となる。「JECA FAIR 2024」でも、三菱電機の電子式マルチ指示計器「ME110Gシリーズ」が国土交通大臣賞を受賞しており、2年連続の受賞となった。その点でも、業界内では大きな話題になった。
福山製作所ではブレーカの開発チームと、計測器の開発チームが同じ建物内にいる。そういった環境や、これまでの技術、知見があったからこそ実現できた製品だと考えている。
MONOist 今後のロードマップなどがあれば教えてください。
松枝氏 計測機器を扱っている中で、誤差が1%より大きい計測機器を製品化することに対して議論にもなった。それでも今回は、ユーザーのニーズや使いやすさに合致したものを早く製品化して、フィードバックを得たいと判断した。既にいろいろな声をいただいているので、順次アップデートして、よりユーザーフレンドリーな製品にしたい。
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