操船精度が施工精度を決める!海底通信インフラを支えるケーブル敷設船「SUBARU」:イマドキのフナデジ!(10)(4/4 ページ)
「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第10回は、インターネット通信を支える光ファイバーケーブルを海底に敷設する海底ケーブル敷設船「SUBARU」について解説する。
P-8が使えないならROVのCARBIS-III
一方、P-8が適さない作業も存在する。既設ケーブルの修理、ケーブル交差部、地形が複雑な場所などでは、連続的にえい航する方式はリスクが高い。こうした局所的で判断を要する作業を担うのが、ROVのCARBIS-IIIだ。
CARBIS-IIIは、海底光ケーブルの調査/修理/埋設に対応するROVだ。適用水深は最大3000mで、スラスターとクローラーを併用した移動方式を採用する。7自由度マニピュレータ2基やケーブルカッター、グリッパーを備え、精密な把持/作業が可能。位置/深度/方位/ケーブル追従を自動制御しつつ、人の判断を介した遠隔操作で、複雑な海底作業を安全かつ確実に遂行する[クリックで拡大]
CARBIS-IIIは高度なセンサーと制御系を備えるが、完全自律型ロボットではない。姿勢保持や深度制御といった基本的な運動制御はシステムが担う一方、作業判断と操作は人が行う。海底は事前に完全な情報を得ることが難しく、想定外の岩や既設構造物が頻繁に現れるため、人の判断を排除した自動化は現実的ではない。
CARBIS-IIIの制御で最も重視されるのは、素早く動くことではなく、安定した姿勢と位置を保ち続けることだ。ROVはスラスターによって3次元的に制御されるが、その操作は極めて穏やかに行われる。不要な加減速や姿勢変化は視界を乱し、ケーブルや海底構造物に余計な力を与える可能性があるためだ。
操作体系は、人と機械の役割分担を前提としている。定常的な姿勢制御や深度保持はシステムが支え、オペレーターは映像やセンサー情報を基に、作業アームの操作や進行判断に集中する。この構成は、産業用ロボットや遠隔操作システムにおける「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の考え方と共通している。
海底という過酷な環境に耐える光ケーブル
船が主役の本連載「イマドキのフナデジ!」だが、ITとの関わりが深い「海底光ケーブル」そのものが気になる読者も多いだろう。海底光ケーブルは過酷な深海環境にも耐えるため、ケーブル外装には鋼線などの防護層を施し、潮流や海底地形、外部からの衝撃に耐えるよう極めて堅牢に守られている。それでも、数十年(!)という運用期間の中では、海底との擦れや微小な動きが積み重なり、外装が摩耗していくという。
特に、海底が硬質な場所や地形変化のある海域では、ケーブルがわずかに動くだけでも、長期的にはダメージの蓄積につながる。施工時には問題が顕在化しなくても、年月を経て劣化が進行するケースも少なくない。こうしたリスクを抑えるため、敷設時には埋設深度やルート選定重視で、ケーブルに余計な力をかけないことが求められる。
このような「海底光ケーブルの事情」的な理由からも、ケーブル敷設船には高精度な操船と張力管理、そして状況に応じた埋設/修理能力が不可欠となるといえるだろう。
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