AIエージェントと設計者との共創の“始まり”を感じさせる2026年:MONOist 2026年展望(2/2 ページ)
設計業務におけるAI活用は「効率化」や「自動化」の段階を越え、設計者の判断や思考の流れに寄り添う存在へと進化しつつあります。2026年は「AIエージェント」と設計者との共創が、現場レベルで少しずつ形になり始める年になるかもしれません。
CADベンダーが描く、AIエージェントとの共創の在り方
実際に、CADベンダー各社の年次イベントでもAIエージェントに関する発表が相次いでいます。例えば、ダッソー・システムズがバーチャルコンパニオンと呼ぶ「AURA」や、オートデスクが機能強化を進める「Autodesk Assistant」などが代表例です。いずれも現時点ではコンセプトやデモを含む段階のものもありますが、AIエージェントとの共創の可能性を感じさせてくれます。
以下、両社の発表内容を基に、簡単に特長を紹介します。
AURAは「SOLIDWORKS」などから直接呼び出すことができ、自然言語での対話によってデータの検索、情報取得、翻訳、要約などを支援します。また、設計した3Dモデルを基に、素材やライティング、背景といった情報をテキストで指示するだけで、フォトリアリスティックな画像(3D CG)を自動生成することも可能になるようです。
一方、Autodesk Assistantは、環境設定や権限の付与、最新の3Dモデルの検索、ツール間の連携に伴うデータ変換などを対話形式で支援します。さらに、設計した3Dモデルからプレゼン用の画像を生成したり、画像の質感を変更したり、さらにはスライド(PowerPoint)作成の半自動化まで支援してくれるといいます。
「Autodesk Assistant」に「プレゼン用の素材を作成してほしい」と指示すると、「Azure OpenAI Service」や「GPT Image 1」を活用して複数のデザインバリエーションを作成し、それぞれを異なる環境に配置した画像を生成。さらに、タイトルやキャッチコピーまで付与して「PowerPoint」の資料を完成させる[クリックで拡大] 出所:オートデスク
加えて、オートデスクは、AIエージェントとの共創を一段進める技術として捉えることができる「ニューラルCAD基盤モデル」を発表しました。設計者がテキストなどで作りたい製品形状を指示すると、要望に合わせた設計案を提示してくれるというものです。その設計案は「Fusion」で編集可能なCADモデルとして生成されるため、そのまま設計作業に移行することが可能です。また、生成された3Dモデルに対して追加部品のスケッチを描くと、AIがそれを解釈し、正確に位置合わせを行った上で3Dモデル化することも可能だといいます。
Autodesk Assistantに対して「現代的なエアフライヤーを作って」と指示すると、バスケットや操作パネルなどの必要要素を備えたエアフライヤーの3Dモデルが自動生成される。そして、生成された3Dモデルに対して金型割りなどを行う際も、Autodesk Assistantに指示するだけで自動処理される[クリックで拡大] 出所:オートデスク
ちなみに、ダッソー・システムズも、将来的にはAURAを介して3Dモデルの生成や修正が行えるようになるとしています。
設計業務におけるAIエージェントの活用は、現時点ではデータの検索、情報収集、要約、翻訳といった限られた範囲での活用が主流になりそうですが、今後、こうした技術が成熟していけば、AIエージェントとの対話はより設計の実務に踏み込んだものになっていくことでしょう。2026年に開催される各CADベンダーの年次イベントの内容にも注目です。
AI活用に不可欠となるプラットフォームの存在
あらゆるデータソースを活用して、設計者の要求に応えるAIエージェントを本格的に業務へ組み込むためには、各種アプリケーションやシステム、それらが扱うデータを一元的に管理/連携し、部門や業務プロセスを横断して活用できるプラットフォームの整備が重要になります。
従来は、人がデータを探し、それを読み解き、判断することが前提でした。しかし、データがプラットフォーム上で整理/構造化されることで、AIがそれらを横断的に参照し、業務を支援できる土台が整いつつあります。API(Application Programming Interface)連携やデータモデルの整備、業務システム/基幹システムとの接続といった取り組みも、AIエージェントの活用を支える重要な要素といえます。
設計業務におけるAI活用をスケールさせる上では、企業ごとの設計思想や判断基準といった暗黙知を、どのようにAIが参照できる形にするかが重要になります。必ずしも独自のAIモデルの構築が前提になるわけではありませんが、企業固有のデータやノウハウを活用できる環境を整えることが、AIエージェントとの共創を成立させる鍵になるでしょう。
AIを特別視し過ぎる必要はありませんが、無関心でいられる存在でもなくなってきています。2026年は、AIエージェントと設計者との共創が、現場レベルで少しずつ形になり始める年になるかもしれません。AIエージェントを自分専属のアシスタント、あるいはパートナーとして捉え、設計者自身が主導権を持ちながらうまく活用していくことが、より良い成果につながっていくと考えます。
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