中国自動車メーカーが目指す知能化とスマート化、2026年からAIDVの競争が始まる:和田憲一郎の電動化新時代!(60)(3/3 ページ)
近年、次世代自動車の議論では「電動化」や「EVシフト」に加え「SDV」といった用語が用いられるようになっている。一方、「知能化」や「スマート化」という概念を用いて将来像を表すことが多い中国自動車メーカーは、SDVを超えた「AIDV」を競争領域に想定しつつある。
2025年6月、先述のXpengの発表に続き、半導体企業のArmは「AIDVとは、自動車の機能性、知能、ユーザーインタラクションの全側面にAIを統合することで、運転体験を根本的に変革する概念である」との見解を示した。
この見解は、AIDVの定義が「AIによって車両が定義される」という従来の枠組みを超え、より包括的な概念へと進化する可能性を示唆している。今後、多くの自動車メーカーがAIDV領域に参入し、AIは走行制御、挙動判断、意思決定、さらにはドライバー支援に至るまで、車両価値の中核を担うと予測される。この潮流は、中国自動車メーカーが長年追求してきた知能化/スマート化の方向性とも合致しており、AIDVは2026年以降、自動車産業の主要なトレンドとなると考えられる。
日本の自動車産業はAIDVに対応できるのか
AIDV分野においては、中国の先進的な3社に加え、BYDや上海汽車といった大手自動車メーカーも本格的な参入を開始している。米国においても、ウェイモ(Waymo)やテスラ(Tesla)などの自動車メーカーが、AIDVの採用をさらに拡大していく可能性が高い。加えて、欧州ではドイツの主要自動車メーカーが中国企業との連携を強化しており、これを契機としてAIDVへの本格的なシフトが進行することが予想される。
このような国際的な動向を踏まえると、日本の自動車メーカーが既にSDVにおいても出遅れている現状に加え、さらにAIDVにまで進んでいく状況に対して危機感しかない。また、Xpengのように高度なAIDV機能を搭載したクルマを一度体験した消費者にとっては、次に選択する車両に同様の機能が備わっていない場合、選択肢にすら入らない可能性がある。
日本国内では依然として電動化やEVシフトが主要な議論の中心となっているが、2026年に新たな潮流として台頭しつつあるAIDVに対し、いかに戦略的に向き合うかが、今後の重要な視点ではないだろうか。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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