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“サウナー”御用達の腕時計「サ時計」はどうやって生まれたのか小寺信良が見た革新製品の舞台裏(38)(2/4 ページ)

2024年12月にクラウドファンディングで約9分で完売する人気を得たサウナー専用腕時計「サ時計」。その開発の発想や背景には何があったのか。舞台裏を小寺信良氏が伝える。

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「サウナには自分の時計が必要だ」

小寺 サウナに専用の腕時計がいるなと思ったきっかけはなんだったんでしょうか?

山田氏 サウナで眼鏡をしていると、金属部分が熱くなるので外しますよね。そうするとサウナの中にある12分計が見えません。また、待ち合わせをしていて、次の予定があるような時に、浴室の中に普通の時計がないところもあって、わざわざ更衣室まで戻って時間を確認しなくちゃならないこともありました。そういうことがよくあって「なんかサウナに集中できないな」という悩みを抱えていました。

 同じような悩みはサウナを頻繁に利用する人は抱えているのではないかと思いました。皆さんG-SHOCKやカシオ計算機の2000円ぐらいの安い時計とかしている方もいますが、これらはサウナでの動作は保証しておらず、それではなかなか安心して使えません。そこで「カシオがサウナでの動作を保証している時計を作ればいいんじゃないか」と考えたところが、サ時計を作りたいと思ったきっかけですね。

サウナ利用者の中心は20〜30代

小寺 市場性として、どんなところを想定したんでしょうか?

山田氏 サウナブームを調査した結果があるんですけど、結構ピラミッドみたいな形になっていて、若い人がかなりサウナに行っています。20代男性では、もう5人に1人ぐらい、女性でも10人に1人ぐらいがサウナに行っているような人気になっています。

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サウナブームの中心層は20代から30代[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

小寺 なるほど。なぜ若者に受けているんでしょうか?

山田氏 きっかけは、ちょうど提案を始めた2021年ぐらいにサウナの漫画のドラマ化などの動きがあって、「ととのう」とかそういう言葉も生まれて広がりました。そこで一気に人気になったようです。

 ゲームとかスポーツとかは戦いというか、勝ち負けが決まる要素がありますが、サウナは友達と一緒に入ってみんなで楽しくなることができます。デジタルデトックスじゃないですけど、本当に何も持ち込めないので、そういったところで今人気なんじゃないかという考察もインターネットなどではありました。

 コロナ禍とかで少し低調になった時期もありましたが、そこも超えてもうカルチャーになっている感じがしますね。

サウナ専用で必要な機能を厳選

小寺 そうなんですね。やっぱりサウナ専用というからには、どの機能を入れてどの機能を削るみたいなところがあったと思うのですが、どういう風に当初設計されていたんでしょうか?

山田氏 最初の提案をしていた時は、ロッカーの鍵と時計が一体化したもので考えていました。

小寺 なるほど。もうロッカーのカギに時計が付いているということですか。設備側が時計を用意するということですね。

山田氏 そうです。いきなりサウナ施設に売るB2Bビジネスみたいな形を当初イメージしました。ただ、なかなかカシオでそういうつながりがないので、少し難しいかという話になりました。

 また、時刻の表示についても、最初はデジタル表示で考えていました。デジタルだといろいろ表示させられるので、温度や心拍など、いろいろな機能を入れようという話もありました。

 ただ、ユーザーに話を聞くと「サウナにいるときに、あんまり余計なこと考えたくない」「本当に時間だけでいい」みたいな話もあって、意外とそんなに機能なくてもいいんじゃないかということになりました。

 それで、いろいろ試行錯誤する中で、今の形に近い、アナログ針2本という形に変わりました。12分計がアナログのものが多いので、そういったところからも今の形にまとまっていきました。

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サ時計のスタイル変遷。設計当初からさまざまなスタイルを検討した[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

小寺 機能が多いということはセンサーも多く入れないといけないから、故障や耐熱性を考えると、全てをフルで動作させるのは難しいんじゃないかというようなこともあったのでしょうか?

山田氏 そうですね。技術的にもコスト的にも、さまざまなものを載せると高くなっていきます。既に世に出ていた最初のサウナ対応腕時計が「サウナで使えるスマートウォッチ」のようなスタイルだったので、差別化というか、カシオが作るならこれぐらいシンプルな方がいいんじゃないかということで、機能を絞りました。

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