“サウナー”御用達の腕時計「サ時計」はどうやって生まれたのか:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(38)(3/4 ページ)
2024年12月にクラウドファンディングで約9分で完売する人気を得たサウナー専用腕時計「サ時計」。その開発の発想や背景には何があったのか。舞台裏を小寺信良氏が伝える。
デザイン面でのサ時計の挑戦
小寺 サ時計ですが、やっぱりデザインが素晴らしいですよね。女性に非常にいい感触で、サイズもちょっと小さめですし、ベルト部分もロッカーキーをイメージさせるような格好になっていて、妻に見せたら「めちゃくちゃかわいい」と言っていました。鈴木さんがデザインで参加された頃は、どの段階まで来ていたのでしょうか?
鈴木氏 ちょうど私が参加した時は、まだデジタル表示のタイミングで、そこからアナログでやる方向性に変わって、どういう形にするかを一から検討していきました。
当時は、中身に何を入れるかなど、あまり細かいことはまだ条件としてはなかったので、本当に薄くて小さなものを作っていました。そこから、実際に量産化すると決まって、耐熱電池を入れたり、湿気に強いケースにしたりすると、当初の予定より3割くらい大きくなっちゃいました。そこで、外装の小林君と相談しながら、本当にギリギリを攻めながら、思っていた形に落ち着けるように挑戦をしました。
小寺 これは耐熱電池が大きかったということですかね?
山田氏 そうですね。普通の電池よりも実装にスペースが必要な感じになるので、周辺も含めると大きくなってしまいます。
小寺 なるほど。構造でも電池を守る必要があるんですね。電池そのものも新しく作ったんですか?
山田氏 耐熱電池そのものは既にあるものですが、カシオ計算機で採用するのは初めてでした。
小寺 この問題を、どのようにクリアして小型化したのですか?
鈴木氏 製品を手に取って見ていただければ分かると思うのですが、上側の文字盤の顔の大きさと、底面の電池が入っている側とは径が変わっていて、上に行くにつれてすぼまっていく形状になっています。それで視覚的になるべく小さく見えるようにして、裏はしっかり必要なスペースを確保しているという工夫があります。
小寺 ヒンジ部分も、一般的な幅の広いものじゃなくて、細くしているのはどういう意図なのでしょうか?
鈴木氏 これは、まず既にあるサウナグッズの、なんかちょっとコミカルな感じをイメージとして入れたかったというのがありました。
カールバンドを使うとなった時に、接続がなるべくスムーズにつながる方が良いと考えました。サウナ中で汗をかいたり、ロッカーの鍵を付けた時でも、あまり気にならないようにするため、バンド部分をなるべく細くコンパクトにまとめるため、小さいヒンジにしました。
小寺 このカールバンドも、いわゆるロッカーキーのバンドによくあるタイプだと思うのですが、サウナグッズ的にはこういうものがスタンダードなのでしょうか?
鈴木氏 そうですね。チャームとかでもそういうバンドを使ったものがあるので、そことの親和性も良いかなと考えました。ただ、時計として使うのは初めてのことだったので、社内的にも基準に合うように工場で引っ張り試験などもしてもらい、無事採用になりました。
小寺 これ、文字盤も鈴木さんがデザインされたんですか? 3時の文字部分に「サ」と書いてあるのは、3時とサウナの「サ」をかけたってことですか?
鈴木氏 実は「7」のところもちょっと大きくなっていて、全体で「サウナ」と……。
小寺 あっ、ホントだ。そこは気付かなかったです。申し訳ない……。
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