“サウナー”御用達の腕時計「サ時計」はどうやって生まれたのか:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(38)(1/4 ページ)
2024年12月にクラウドファンディングで約9分で完売する人気を得たサウナー専用腕時計「サ時計」。その開発の発想や背景には何があったのか。舞台裏を小寺信良氏が伝える。
連載「小寺信良が見た革新製品の舞台裏」趣旨
今までにない新しい製品のアイデアや発想はどこから生まれてきたのか。映像系エンジニア/アナリストの小寺信良氏が商品企画や設計・開発の担当者へのインタビューを通じ、革新製品の生まれた舞台裏に迫る。
サウナ人気も今やすっかり定着したようである。筆者も妻が温泉好きなので近隣の温泉やスーパー銭湯によく行くが、大抵サウナがあり、たくさんの人が入っている。昨今ではサウナグッズも定着し、サウナハットを被っている人も珍しくなくなった。
そんな中、サウナの中でも使える、サウナー専用腕時計「サ時計」が登場した。作ったのはやっぱりカシオである。腕時計メーカーは数々あれど、やっぱりこうした変なものはカシオから出てくる。
サ時計は、2024年12月にクラウドファンディングで販売し、開始から約9分で約2200台が売り切れるほどの好評を得た。2025年10月より一般販売も始まり、現在もかなり品薄の状況が続いている。
こうしたとがった腕時計は、一体どういう発想で生まれてきたのか。その背景を探るべく、開発者の皆さんにお話を伺うことにした。
今回お話を伺ったのは、サ時計開発プロジェクトである「TEAMサ」の4人のメンバーである。プロジェクトリーダーの山田真司氏は実装設計、小林義弘氏は外装設計、百貫(ひゃっかん)将吾氏はソフト開発、鈴木千裕氏はデザイン担当である。全員入社6年目の同期という、若いチームだ。
入社6年目の同期4人でチームビルディング
小寺 まず「TEAMサ」のメンバー紹介とご担当をお伺いします。
山田氏 山田と申します。2020年に入社しまして、2年目にこのサ時計の提案を始めました。プロジェクトでは発案人ということでプロジェクトリーダーやっています。全体的なプロジェクト推進であったり、あと本業にも関わるんですけれども、時計の中身の設計、歯車とか基板とかであったり、そういうところの設計や開発をやっています。
もともと社内の新規事業提案プログラムみたいなものがあって、そこでサ時計を、この同期4人を中心に進めてきました。
小林氏 小林と申します。サ時計との関わり方としては、外装部分、見える部分の部品の設計を担当しました。
鈴木氏 同じく6年目の鈴木と申します。自分はサ時計では主に製品のデザインを担当しました。あとイベントとかで使ったグッズとかあるのですが、これを担当しています。普段の業務としては、プロダクトデザインで、楽器品目をメインにコンシューマー製品を担当しています。
チームには、小林君と山田君が企画を進めていく中で、途中でアウトプットするのにデザイナーが必要だという話があり、そこで自分もちょうどサウナにハマりたてだったので、手を上げてチームに入れてもらいました。
百貫氏 百貫と申します。サ時計ではソフト開発を担当させていただきました。普段の業務も腕時計のソフト開発をしているので、その延長でやらせていただいております。
チームに加入したきっかけは、サ時計のプロトタイプを作りたいという話があったところで、実際の動作をするような試作品を作るために途中から参加させていただきました。
同期の風通し良さを生かし、最初は軽い感じで
小寺 「TEAMサ」同期の皆さんで構成されてますが、これは山田さんがあえて同期の人をスカウトしていったような感じなんですか?
山田氏 最初は自分と小林君がよく一緒にお昼ご飯に行ったりしていて、時計の中身と外側っていう組み合わせで2人で始めました。結果的に同期4人になりましたけど、同期で集めようと思ったわけではなく、なんかデザイナーの人が欲しいとなった時に、若手デザイナーみたいな人たちを集めてもらってプレゼンした結果、同期の鈴木さんが手を挙げてくれたという感じです。
百貫君に関しても、昼ご飯を同じ社食で食べたりして、同期で話がしやすかったからちょっとお願いして、そのまま入ってもらったような形です。やっぱり同期だとなんかいろいろなことを気軽に聞けるという良い点もありました。そういうつながりがあって、最終的に全員同期になりました。
小寺 そもそも入社2年目の社員の提案は、なかなか通らないように思うんですけど、結構大変でしたか?
山田氏 2021年当時はちょうどサウナが流行ってきた状況でした。そこで軽い感じで「ちょっとサウナで使える時計をカシオで作ったら面白いんじゃないか」というのを自分の上司に提案したら「ちょうど新規事業提案プログラムがあるから、そこに参加してみなよ」と教えていただき、参加する流れになりました。そんな感じで始まりました。
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