出版印刷から半導体へ、久喜工場で「次世代ガラスコア基板」を生産:工場ニュース
DNPは久喜工場内に「TGVガラスコア基板」のパイロットラインを新設し、2025年12月に稼働を開始する。
大日本印刷(DNP)は2025年12月16日、埼玉県久喜市の久喜工場内に、次世代半導体パッケージ向けの「TGV(Through Glass Via:ガラス貫通電極)ガラスコア基板」のパイロットラインを新設し、同月に順次稼働を開始すると発表した。同パイロットラインでTGVガラスコア基板の量産検証を行い、2026年初頭に高品質なサンプルの提供を開始する。
主なターゲットは高アスペクトかつ高品質の製品
近年、生成AI(人工知能)の進展などによって、機能の異なる複数の半導体チップを1つの基板上に高密度で実装し、処理速度を向上させるチップレットが急速に普及し始めている。このチップレットによって次世代半導体のパッケージ基板が大型化している。その中、従来の有機樹脂ベースの基板では、求められる平たん性が不足して、微細な配線形成が困難になり、剛性不足によって基板に反りが生じて半導体チップ実装が困難になるという課題がある。
DNPは、次世代半導体パッケージ基板の課題解決に向けて、従来の有機コア基板の代替として採用が見込まれるTGVガラスコア基板を2023年に開発した。
多くの企業でガラスコア基板の採用に向けた検証や半導体パッケージの信頼性評価の動きが加速する中、DNPは今回、TGVガラスコア基板製造のパイロットラインを新設し、2026年初頭にサンプルの提供を開始する。この施設と体制の構築に当たっては、出版印刷を主力としてきた久喜工場の人材や土地などのリソースの最適化を図り、DNPの事業ポートフォリオの改革も推進している。
TGVガラスコア基板は、マザーボードと半導体チップの間に配置されるコア材料で、パッケージ技術「FC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array)」用の製品となる。同製品は、微細な貫通電極が多数形成されており、マザーボードと半導体チップの間の電気接続を可能にする。
同製品のパネルサイズは510×515mmで、次世代半導体のパッケージ基板として必要な平たん性と、反りが生じにくい剛性を備えている。なお、従来の有機樹脂製基板からガラス製の基板に置き換えることで、より高密度な貫通電極の配置が可能となり、半導体パッケージの一層の高性能化に貢献するという。
同製品では、ガラスを貫通する孔に銅を充填する「充填タイプ」と、貫通孔の側壁に金属層を密着させる「コンフォーマルタイプ」をラインアップしており、両製品の製造と提供を行う。
DNPでは、顧客ニーズが高く、技術的優位性が発揮できる「高アスペクト(ガラスの厚みに対して貫通孔径が小さい)かつ高品質の製品」を主なターゲットとして、TGVガラスコア基板の量産化を目指す。
今後は、DNPが新設するパイロットラインで2026年初頭にTGVガラスコア基板サンプルの提供を開始し、顧客とマーケットの動向を見ながら、2028年度の量産開始に向けた体制を構築していく。
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