健診の心電図だけで糖尿病予備群を検出するAIを開発:医療技術ニュース
東京科学大学らは、健診で測定する心電図だけから糖尿病予備群を見つけるAI「DiaCardia」を開発し、腕時計型ウェアラブル相当の心電図でも高精度に検出できることを示した。
東京科学大学は2025年11月11日、東北大学と共同で、一般的な心電図検査だけで糖尿病予備群を見つけるAI(人工知能)モデル「DiaCardia」を開発したと発表した。血液検査なしに、心電図の波形に潜むわずかな変化から将来の糖尿病リスクを高精度に推定できる。腕時計型ウェアラブル端末で計測される心電図に相当するI誘導心電図でも、同様の精度が得られることを確認している。
研究では、2022年に単一施設で健診を受けた1万6766件のデータを用い、心電図波形から算出した特徴量と空腹時血糖などの血糖指標を組み合わせて機械学習モデルDiaCardiaを構築した。健診でも用いられる12誘導心電図だけを入力として、糖尿病予備群や糖尿病を高い識別性能で検出できたほか、別施設および別メーカー機器の2456件の心電図でも良好な精度を維持し、外部データでの再現性も確認された。
年齢や性別、BMI、血圧、喫煙・飲酒などの影響を統計的に補正しても性能が保たれたことから、DiaCardiaはこれらの背景因子ではなく、糖尿病予備群に特有の心電図変化を捉えていると考えられる。
モデルの解析からは、aVL誘導のR波の高さや心拍数変動などが重要な指標として抽出され、インスリン抵抗性や自律神経障害といった既知の病態とも整合する結果となった。
さらに、12誘導のうちI誘導のみのデータを用いても、12誘導とほぼ同等の精度で糖尿病予備群を検出できることが分かった。
I誘導は、腕時計型ウェアラブル端末で取得できる心電図に相当する。日常生活の中で「いつでも、どこでも、誰でも」スマートウォッチなどを通じて糖尿病予備群をスクリーニングする仕組みへの応用が期待される。今後、実際のウェアラブル端末を用いた検証や社会実装に向けた検討を進め、糖尿病の早期発見と発症予防に役立つ新たな予防医療の形を目指すとしている。
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