2028年度までに3倍に、パナソニック エナジーはAIデータセンター向け電源に勝機:パナソニックグループIRデー2025(前編)(2/2 ページ)
パナソニックグループは「Panasonic Group IR Day 2025」を開催し、同グループが注力する「ソリューション領域」で成果を残している3つの事業の戦略について説明した。前編で基本的な考え方と、AIデータセンター向けソリューションで実績を伸ばすパナソニックエナジーの取り組みについて取り上げる。
3年間で約3倍へ、2028年度には8000億円の売上高目指す
これらの好調を受け、パナソニック エナジーでは2028年度に2025年度の約3倍となる8000億円の売上高を目指す。また、売上高を大きく成長させる中でも高収益を維持し、ROIC(投下資本利益率)は20%以上を目標とする。この目標を実現するために「供給体制の整備」と「次世代に向けた提案力/開発力強化」の2点に取り組む。
供給体制の整備については、日本と北米の既存拠点の拡充や切り替えを進め、効率的な投資で供給能力を確保する。パナソニック エナジーの主要拠点はグローバルで21拠点があるが、基本的には日本と北米の拠点の有効活用で賄う考えだ。「新たな工場が必要になるような大規模な投資が必要になることはなく、既存の拠点を有効活用することで対応できると考えている」(只信氏)。
日本での電池セルの生産は、2028年度に2025年度比で約3倍の生産能力に増強する他、既存拠点でのライン拡充を進め、2025年度から増産を進める。また、車載用ラインを改造し、2026年度第1四半期から量産を開始する。モジュールについてはパートナー企業との協力で、生産能力の増強を図る。
北米については、将来の需要拡大と供給網整備に向け、セル生産では、カンザス州の車載電池生産工場の一部をAIデータセンター向け蓄電システムの生産ラインへと振り向けることを検討している。また、モジュールについては、メキシコ工場の既存ライン増強と新たな生産エリアの新設を行うことを検討する。「直近の需要の増加に対しては主に日本の供給体制強化で対応し、中長期的な視野で北米の供給体制増強を進めていく」と只信氏は述べている。
データセンター向け蓄電システム用のキャパシターも独自開発
次世代に向けた提案力/開発力強化については、複雑化するデータセンター向け電源への要望を捉え、新たなシステムやソリューション開発を進める。デバイスの進化などに加え、2024年度にはBBU(Battery Backup Unit)内蔵シェルフなどを展開。さらに、2026年度には独自開発のキャパシターを搭載したCBU(Capacitor Bank Unit)内蔵シェルフを展開予定としている。今後は2028年度をめどに超高出力の高電圧対応の電源専用ラックなども展開予定とする。
「CBU内蔵シェルフについては、顧客からの要望に応えるために逆算して、独自のキャパシターを材料から開発して製品化を進めている。これはパナソニック インダストリーと一緒に進めている。キャパシターのセル開発そのものはパナソニック インダストリーが担い、商品とシステム化はパナソニック エナジーで行う。市販品では求めるスペックのモノがなかったため、独自のものをグループ内で開発した。グループ内でさまざまな製品を持つ強みが発揮できたといえる」と只信氏は考えを述べる。
この他、データセンター市場で実績のある電源メーカーとの協業や、人材リソースの大幅なシフトなどを進める計画だ。
将来のソリューションに向け、グループ連携によって電源/システム技術者も増強していく。
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