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高指向性と高出力を両立する次世代レーザーPCSELの研究成果を発表:組み込み開発ニュース
スタンレー電気は、京都大学と日亜化学工業と共同で進める次世代レーザー「PCSEL」の研究成果を公開した。発光サイズΦ1mm素子で高指向性ビームを生成し、水中センシングへの有効性も確認した。
スタンレー電気は2025年11月12日、京都大学高等研究院 特別教授である野田進氏の研究室、日亜化学工業と共同で進めている、次世代半導体レーザー「PCSEL(フォトニック結晶面発光レーザー)」の研究成果を公表した。
PCSELは、高出力、高指向性、高機能性を兼ね備えたレーザーだ。今回の研究では、発光サイズΦ1mmのPCSEL素子で高指向性ビームを生成した。ビームの広がり角は従来の0.1〜0.2度から0.05度以下へと向上し、輝度も大型レーザーと同水準を確保している。この成果は青色波長に対して高い吸収率を持つ、銅やアルミニウムの加工用途への活用が見込まれる。
さらに、水中センシングでも精度の高さと有効性を確認した。理論上は水中10m先の1cmレベルの物体検知が可能で、赤外光や音波では難しい海中障害物の検知やインフラの点検、資源探査などへの応用が期待される。自動車分野では、雨天や濃霧下でのLiDAR用途にも展開できる可能性がある。
三者は、スタンレー電気と京都大学のフォトニック結晶設計技術に、日亜化学工業のレーザー素子製造技術を組み合わせて、2024年から早期社会実装に向けた研究を続けている。今後も社会実装に向け、光技術の新たな応用領域を広げていく。
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