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NTTと三菱重工がレーザー無線給電で世界最高効率、1kWを1km送光して152W受電組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

NTTと三菱重工業は、大気中のレーザー無線給電で世界最高効率を達成したと発表した。出力1kWのレーザー光を用いて1km先の受光パネルに無線でエネルギーを供給する光無線給電実験を実施し、効率で約15%に当たる152Wの電力を得ることに成功した。

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 NTTと三菱重工業は2025年9月17日、大気中のレーザー無線給電で世界最高効率を達成したと発表した。出力1kWのレーザー光を用いて1km先の受光パネルに無線でエネルギーを供給する光無線給電実験を実施し、効率で約15%に当たる152Wの電力を得ることに成功した。今後はさらなる高効率化や長距離の無線給電に向けた研究開発を進めながら、電力ケーブルを引くことが難しい離島や被災地などへのオンデマンド給電、飛行中のドローンやHAPS(高高度プラットフォーム)への無線給電、さらには宇宙太陽光発電などへの展開を見込む。

 無線給電の方式としてはマイクロ波を用いるものとレーザー光を用いるものがある。マイクロ波無線給電は既に実用化されており利用が広がっている一方で、レーザー光を用いた光無線給電は実用化に至っていない。レーザー光の高い指向性を生かして、小型かつkmオーダーの長距離無線給電が実現できるという期待があるものの、大気中でレーザー光が伝搬する際に強度分布が不均一となり、光電変換素子における電力変換効率が低くなってしまうことが課題になっていた。

レーザー無線給電の模式図(左)と特徴(右)
レーザー無線給電の模式図(左)と特徴(右)[クリックで拡大] 出所:NTT
レーザー無線給電の課題
レーザー無線給電の課題[クリックで拡大] 出所:NTT

 今回両社が開発したレーザー無線給電では、NTTのビーム整形技術と、三菱重工業の受光技術を組み合わせて高効率化を図った。光を送る側の開発を担当したNTTは、レーザー光の強度を1km先でも均一化できる「長距離フラットビーム整形技術」を、光を受ける側の開発を担当した三菱重工業は、レーザー光を拡散するホモジナイザやコンデンサーを用いて電流変動を抑制する平準化回路の組み合わせで大気の揺らぎの影響を抑制する「出力電流平準化技術」を開発した。

レーザー無線給電の開発体制
レーザー無線給電の開発体制[クリックで拡大] 出所:NTT

 このレーザー無線給電の試作システムを用いた屋外環境における長距離光無線給電実験は2025年1〜2月に、和歌山県白浜町にある南紀白浜空港の旧滑走路で行われた。レーザー光を送る光学部品を格納した送光ブースを滑走路の端に、そこから1km先に受光パネルを格納した受光ブースを設置した。送光時の光軸の高さは地面から約1mと低く、かつ光軸が地面水平方向であるため地面の熱や風の影響を強く受け、特に大気の揺らぎが強い環境下で実験を行った。

南紀白浜空港の旧滑走路で行われた実験の様子
南紀白浜空港の旧滑走路で行われた実験の様子[クリックで拡大] 出所:NTT

 送光ブースでは波長1070nmのファイバーレーザーを用いて出力1035Wのレーザー光を発生させ、回折光学素子を用いて1km先で強度分布がフラットになるようにビームを整形した。さらに、受光パネルに正確に照射するために、方向制御ミラーでビームの方向を調整。整形されたビームは、送光ブースの開口から射出され、1kmの空間を伝搬して受光ブースへ到達する。伝搬中の大気の揺らぎによって生じる効率低下の大きな要因であるレーザー光の強度スポットは受光ブースのホモジナイザで拡散され、均一なビームが受光パネルに照射されることで高効率に電力に変換することができた。なお、受光パネルにはコストと入手性を考慮してシリコン製の光電変換素子(一般的な太陽光発電パネル)を採用した。

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