AIとの対話によって設計業務が行える「SOLIDWORKS」の未来を提示:3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2025 レポート(2/2 ページ)
ダッソー・システムズの年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2025」の基調講演に登壇したDassault Systemes Mainstream Innovation & CRE担当 シニア・バイスプレジデントのジャン・パオロ・バッシ氏と、同社 SOLIDWORKS CEO 兼 R&D担当 バイスプレジデントのマニッシュ・クマー氏の講演内容を紹介する。
「自動化」「支援」「共創」の3軸で進化するSOLIDWORKSのAI機能
クマー氏は冒頭、SOLIDWORKSの最初のバージョンをリリースしてからの30年間で、ビジネス環境やテクノロジーが大きく変化してきた一方で、その中で“変わらないもの”として、日々の課題や困難に立ち向かうエンジニアやデザイナーの存在を挙げた。そして、SOLIDWORKSとそのコミュニティーが、これまでもさまざまな社会課題の解決に活用されてきたことを強調した。
30年間の歩みの中で、SOLIDWORKSは設計領域からシミュレーション、製造、PDM、レンダリングへとカバー領域を拡張し、3DEXPERIENCEプラットフォームとの統合も進めてきた。これと並行してAIへの投資も行われ、早い段階から研究開発に取り組んできたという。研究開発の母体となるR&Dチームは発足時に8人程度だったが、現在は5000人規模にまで拡大しており、毎年12億米ドル以上の投資が行われていること、そしてその中心にAIが据えられていることにも言及した。
SOLIDWORKSにおけるAIの取り組みは、「Automate(自動化)」「Assist(支援)」「Co-create(共創)」の3つの軸で進化しているという。
自動化は、設計中の繰り返し作業の排除を実現する。Smart Mate(スマート合致)、Hole Wizard(穴ウィザード)、Smart Components(スマート構成部品)、Hole Alignment(穴整列)といった既存機能もその一例で、「こうした多くの既存機能にAIが使われている」とクマー氏は説明した。
支援については、クラウドネイティブ設計ツールに搭載されているAI機能「Design Assistant」を取り上げた。ユーザーの操作を学習し、設計内容に基づいた提案を行うことで、煩雑な繰り返し作業などを軽減する。名称を“Assistant(アシスタント)”としている理由について、クマー氏は「設計はあくまでも設計者が主導するものであり、AIはそれをサポートする“隣に座っている専門家”であるべきだからだ」と補足した。
そして、設計者との共創を実現する存在として紹介されたのが、バーチャルコンパニオン「AURA」である。AURAは企業内のプロセス、仕様、規制などのノウハウを安全に学習/分析し、「ChatGPT」のように自然言語での対話によって検索、情報取得、翻訳、要約などを支援する。「AURAによって、今後SOLIDWORKSとの関わり方が大きく変わる」(クマー氏)とし、将来的にはAURAとの対話を通じてAIが自動的に3Dモデルを生成したり、変更要求に対応したりすることも可能になるという。講演では、設計した3Dモデルを基に、素材、ライティング、背景といった情報をテキストで指示するだけでフォトリアリスティックな画像が自動生成される様子も紹介された。
クマー氏は「バーチャルコンパニオンはSOLIDWORKSの文脈で動くため、“モデルと会話する”ことができる。このアセンブリには何個のコンポーネントがあるのか、どの材料を使っているのか、材料ごとに部品をグループ化できるか、重量はどうか、色はどうか……といった質問への回答をするだけでなく、“操作”も可能になる。特定の部品を表示・非表示にしたり、特定の材料を持つ部品を探して別の材料に変更したりといったことができる」と述べ、将来的にはコマンドを探したりワークフローを覚えたりする必要がなくなり、AIとの対話によって設計業務が行える未来を示唆した。
講演の後半では、最新の「SOLIDWORKS 2026」で新たに搭載される「Selective Loading(選択的ロード)」が紹介された。3DEXPERIENCEプラットフォーム上で表示した大規模アセンブリに対し、作業したい部品やサブアセンブリだけをグラフィカルに選択してSOLIDWORKSに取り込める機能だ。選択時にはカスタムプロパティ、材料、体積などを基準にフィルタリングすることもでき、必要な要素だけを取り込むことが可能となる。
クマー氏は講演の締めくくりとして、「われわれは創業以来、皆さんを最高の技術で支え続けることを使命としている。変化のための変化ではなく、価値を維持するために進化し、ツールを通じて先進技術を民主化し、次世代の人材がどのような課題にも立ち向かえるよう支援する。そのためにもAIを含む新技術への投資を続けていく」と述べた。
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